パリ・モンマルトルの丘に美しく佇むサクレクール寺院のふもと、今も画家たちが集うテアトル広場のすぐ近くにダリ・パリ美術館(Dali Paris Musée)別名:エスパス・ダリ(Espace Dali)はあります。

ひとつひとつの作品が語りかけてくるのは、ダリの繊細な心や狂気、そして深い愛情と情熱。見ているだけで心の奥底に触れられたような、胸が締めつけられる感動を覚えました。まるでダリ本人がドアを押し開け、「ようこそ、不思議の国へ」と笑いかけるかのような、扉の向こうには、時間も常識もゆがむ異空間が待っていました。

この記事では、パリ・ダリ美術館の魅力を余すことなくお伝えし、その幻想的な空間で心が震える体験をするための見どころや収蔵作品の見方、さらには周辺観光スポットやアクセス情報までご案内します。

サルバドール・ダリ(Salvador Dalí)

1904年5月11日 スペイン・フィゲーラスに生まれる
1922年 マドリードの王立サン・フェルナンド美術アカデミーに入学
1929年 ルイス・ブニュエルと共同で映画『アンダルシアの犬』制作、ガラ・エリュアールと出会う
1931年 『記憶の固執』を制作、国際的に注目される
1934年 ガラと結婚
1940年 第二次世界大戦勃発、アメリカへ移住(1948年まで)
1948年 戦後スペインに帰国、キリスト教的・古典的テーマへ転向
1974年 フィゲラスに「ダリ劇場美術館」を開館
1982年 妻ガラ死去、大きな打撃を受ける
1989年1月23日 フィゲラスで死去(84歳)


パリ・ダリ美術館

パリ・ダリ美術館は、1982年に開館し、ダリ専門家として有名なキュレーターの1人である創設者のベニアミノ・レヴィが収集したオリジナル作品が並びます。彫刻やリトグラフ、版画や家具など、多彩な作品とその作品の背景の解説とともに、ダリの独特で夢幻的な世界に浸れます。

部屋の真ん中には、ダリのミューズでもありパートナーでもあった、ガラ・エリュアールとの愛の物語や、貴重な2人の様子を映像で見ることができます。この美術館を訪れることによって、彼の作品は、単なる奇抜さではなく、緻密な技術と哲学的な探求に裏打ちされていると理解できます。

ダリ・パリ美術館の見どころ

作品の見方

ダリの作品を鑑賞する時は、まずはその奇抜な見た目に驚き、感嘆してください。しかしその後は、作品の奥にある物語や感情、彼が込めた思いを想像することが大切です。表面だけを見て「変わっている」と切り捨てるのではなく、心の底から彼が何を伝えようとしているのか、あなた自身の感情と向き合いながら感じ取ってみてください。

ダリのインスピレーションと背景

サルバドール・ダリは幼少期から繊細で感受性豊かな少年でした。彼の内面には、孤独や恐怖、そして強烈な愛情が混在していました。精神分析の父フロイトの理論に傾倒し、無意識や夢の世界を探求することで、彼の創作はより深みを増しました。

彼の故郷スペインの風景や伝統、そして妻ガラへの深い情熱は、作品の随所に色濃く反映されています。時に狂気とも思える彼の表現は、実は心の傷や葛藤をさらけ出す行為でもありました。だからこそ、作品を前にすると、私たちは単なる美術作品ではなく、一人の人間の人生の断片、魂の叫びに触れるのです。

美しい脚線のスペース・エレファント『宇宙象』

足には節があり、よく見ると骨になっています。細い足で象の巨大な体を支えることができるのは、無重力がゆえです。この作品は、現実世界の重さと幻想の軽さの対比や矛盾を表していると言われ、ダリのシュルレアリスムの象徴的な作品になります。

ぐにゃっと曲がった時計『記憶の固執』

溶けているような歪んだ時計は、正確に時を刻むものが、人間の感覚において一定のものではなく、心理的なことによって流動的で変わっていくということを表しています。アインシュタインの相対性理論を芸術で表したのではないでしょうか。ダリの作品に触れていると、凝り固まった考えや固定観念が解けていきます。

ダリ・パリ美術館がおすすめな理由

サルバドール・ダリの彫刻やリトグラフ、日本の手法を取り入れた版画や、その作成方法など、多様な作品とその作品の背景の解説とともに、ダリの独特で夢幻的な世界に浸ルコとができるでしょう。部屋の真ん中には、ダリのミューズでもありパートナーでもあった、ガラ・エリュアールとの愛の物語や、古いテレビから流れる、生前の2人の様子も見ることができます。

ダリ・パリ美術館の訪れるためのヒント

ダリ・パリ美術館の空いてる時間帯

私が訪れたのは平日11時半頃、館内には3人ほどいました。学生が写生をしに来たり、生後5ヶ月くらいの赤ちゃんも抱っこされて、ダリの作品を見ていました。

13時を過ぎたくらいから、少しづつ人が増えてきましたが、一点づつゆっくり鑑賞できるくらいの人の多さでした。

ダリ・パリ美術館の所要時間

美術館は、地下1階の省スペースに美術館の紹介があり、その下フロアにダリの作品が置かれています。一点づつゆっくり見ても、1時間ほどです。

ダリ・パリ美術館(Dali Paris Musée)

入場料:16€
公式サイト:ダリ・パリ美術館
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開館時間:10:00-18:00
空いてる時間帯:午前中から13時ころ
所要時間:1時間

作品の数:約300点(展示数は異なる)
作品の種類:絵画、彫刻、オブジェなど
芸術形式:シュルレアリスム
有名作品:『記憶の固執』、『宇宙像』彫刻

住所:11 rue Poulbot 75018 Paris(地図)
最寄り駅:Anvers, Abbesses, Lamarck-caulaincourt(メトロ 12番線)
オーディオガイド(日本語):あり
ロッカー、トイレ:あり



さいごに

私はダリ・パリ美術館を訪れたとき、自分の方向性やこれから何をしたいのか考える日々で、鬱々と灯りのない沼で、もがいていました。そんな暗闇のなか、『Snail and the Angel』の彫刻を見たときに、でっかいカタツムリの上に小さい金色の天使がキラキラ光り、「エイヤー」と腕を上げて鼓舞しているように感じ、私の心が弾けました。だんだんと笑いがこみ上げてきて、いつの間にか沼がなくなっていました。

ここはシンプルでこじんまりとした美術館ですが、作品が作られた背景や物語を知りながら、作品を間近で見ることができます。そしていつの間にかダリの奇抜でウィットな人柄を身近に感じ、ダリの魂に触れることができると思います。

パリを訪れる機会に、ぜひこのユニークなダリ・パリ美術館を訪れてみてください。サルバドーレ・ダリという天才が創った幻想的な世界にしたってみてはいかがでしょうか。

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