パリのチュイルリー公園に佇む小さな美術館、オランジュリー美術館(Musée de l’Orangerie)。ここには、クロード・モネ(Claude Monet)が晩年に描いた『睡蓮』の大作が、特別な空間で展示されています。
天窓から差し込む自然光が、壁一面に広がる睡蓮の絵を優しく照らし出します。光の加減で刻々と表情を変える水面を眺めていると、まるで自分がモネの庭の池のほとりに立っているような、不思議な感覚に包まれます。
2時間ほどで回れるコンパクトな美術館ですが、そこには急ぎ足の観光では味わえない、ゆったりとした時間が流れています。印象派の名作たちと静かに向き合える、パリの隠れた名所です。
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オランジュリー美術館

オランジュリー美術館は、もともと19世紀にサポレオン3世が作った温室(オランジュリー)を改装して誕生した美術館です。1927年から一般公開が始まり、現在はクロード・モネの『睡蓮』を中心に、印象派とエコール・ド・パリの名作約150点を所蔵しています。
最大の特徴は、モネが構想した水の風景を体感できる円形展示室。自然光が降り注ぐ空間で、8枚の大作に囲まれる体験は、ここでしか味わえません。
モネの睡蓮の世界
オランジュリー美術館を訪れる最大の理由が、クロード・モネの連作『睡蓮』です。この作品は、モネが晩年に構想した壮大なプロジェクトの集大成といえます。
没入体験ができる円形展示室
真っ白な部屋に、360度ぐるりと配置された8枚の睡蓮の絵画。上から降り注ぐ自然光によって、水面の表情が刻々と変化します。この空間に立つと、まるでモネが愛したジヴェルニーの池のほとりにいるような感覚になるでしょう。
モネは、すべての壁を包み込むようなパノラマ作品を構想しました。円形から楕円形へ、そして無限のシンボルを表す二重の楕円形へと進化したこの設計は、時間の流れと永遠の世界を表現しています。
時間とともに変わる作品の表情
天窓から差し込む太陽の光が、絵の中の水面を照らします。筆致はあえて曖昧に、形よりも感じた光を重視し、朝の柔らかい光、昼の明るさ、夕方の温かみのある光。時間とともに、睡蓮の池は表情を変えていきます。
作品の前に立っていると、色彩が脈打つように広がり、光のなかに溶けていくような感覚になりました。時間を忘れ、ただ自然の光によって変化する睡蓮の池を眺めているような、まるで瞑想の世界にいるかのようです。
年々、視力を失いつつあったモネが、それでも筆を握り続けた理由。それはきっと、変わり続けるものを、永遠にしたかったからかもしれません。
立ち止まり、深呼吸をすると、自分のなかの時間もゆっくりと流れ始めます。
オランジュリー美術館コレクション
地下階には、20世紀初頭の美術商ポール・ギヨームとその妻ドメニカが収集した印象派の名作が展示されています。ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ、モディリアーニなど、巨匠たちの傑作をじっくり鑑賞できます。
アンリ・ルソー(Henri Rousseau)『La Carriole du père Junier(ジュニエ爺さんの二輪馬車)』1908

アンリ・ルソー(Henri Rousseau)は、独学ながら独自の世界観を確立した画家です。真正面と真横向きのキャラクター、遠近法がほとんどない2次元的な構図が特徴で、当時は賛否両論を呼びました。しかし、ロートレック、ゴーギャン、ピカソなどの巨匠たちは彼の才能を高く評価していました。
現実を忠実に描くのではなく、自身の頭の中にある理想や物語を描くルソーの作品は、夢の中のような不思議なリアリズムを感じさせます。
鑑賞ポイント: 静かな風景の中に潜む、細かなディテールに注目してみてください。どこか奇妙で幻想的な世界が広がっています。
マリー・ローランサン(Marie Laurencin)『Portrait de Mademoiselle Chanel(ココ・マドモアゼル・シャネルの肖像)』1923

柔らかいパステルカラーと淡い輪郭、夢見るような瞳。マリー・ローランサンの作品は、女性の優美さを象徴するような美しさに満ちています。特に注目したいのが『Portrait de Mademoiselle Chanel 』です。ローランサンとシャネルは同じ1883年生まれで、男性社会の中で自立して生きたパリジェンヌでした。
1920年代のパリでは、ローランサンに肖像画を描いてもらうことが社交界のステータスでした。シャネルも肖像画を依頼しましたが、完成品に満足できず描き直しを求めました。しかしローランサンは譲らず、結局この絵はシャネルの手に渡ることはありませんでした。
鑑賞ポイント: ファッション界の革命児シャネルを、ローランサンがどのように詩的な存在へと昇華させたのか、その解釈に注目してみてください。
アンリ・マティス(Henri Mattise)『Les Trois Sœurs(三姉妹)』1917

『Les Trois Sœurs』は、マティス特有の色彩感覚が光る作品です。3人の女性が静かに並ぶシンプルな構図ながら、それぞれの表情や服装から個性の違いが感じられます。1人は読書に集中し、1人は冷静にこちらを見つめ、後ろの女性は柔らかな視線を向けています。色彩は抑制されていますが、人物の個性を引き立てるように計算されています。
この作品が描かれた1917年は、第一次世界大戦の真っ只中でした。激動の時代にあって、マティスは穏やかな女性像を描くことで、平和や安定への願いを込めたと解釈されています。また、彼の娘マルグリットへの思いが投影されているという説もあります。
鑑賞ポイント: マティスの色で描く感覚に触れながら、作品が静かに揺さぶる内面の感情を感じてみてください。
モーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo)『La Maison de Bertio(ベルリオの家)』1914

モーリス・ユトリロ(Maurice Utrillo)は、パリの街並みや建物を独特の色彩と質感で描いた画家です。特にモンマルトルの風景を多く手がけ、雪や雨に濡れた石畳や壁の質感を感じさせる表現が特徴で、当時のパリの庶民的な雰囲気を捉えました。
『La Maison de Bertio』では、静まり返った街角の家が柔らかな光に包まれ、ユトリロならではの厚塗りの白や灰色のトーンが建物の存在感を際立たせています。現実の建物をただ描くのではなく、画家自身の感覚で色や形を調整することで、どこか詩的で孤独感のある空気を醸し出しています。
鑑賞ポイント: 家の壁や屋根の質感、道の表面に現れる光の揺らぎに注目してみてください。ユトリロが描くパリの静謐な時間を、まるで散歩しているかのように感じられます。
アンドレ・ドラン(André Derain)『Portrait de Madame Paul Guillaume au grand chapeau(ポール・ギヨーム夫人の肖像)』1928-1929

大きな帽子をかぶり優雅にたたずむ女性。ドランの『Portrait de Madame Paul Guillaume au grand chapeau 』は、装飾性と洗練が調和した傑作です。モデルのドメニカ・ポール・ギヨームは、夫の死後このコレクションを引き継ぎました。当時、遺産は妻ではなく息子に引き継がれるのが一般的でしたが、子供がいなかった彼女は男の子を養子に迎えます。しかしその養子も謎の死を遂げたため、世間からは疑いの目で見られていたといいます。
光沢のある上質なローブや大きな帽子から、彼女のブルジョワな生活が伝わってきます。この絵は彼女のありのままの姿なのか、それとも世間が持つイメージなのか、想像しながら鑑賞するのも面白いでしょう。
鑑賞ポイント: ファッションと肖像の間にある記録性と芸術性のバランス、そしてモデルの個性と画家のスタイルが共鳴する様子に注目してください。
おすすめの周り方
1. まずは『睡蓮』の部屋へ
到着したら、迷わず1階の円形展示室へ。朝や午後の自然光で、印象がガラリと変わります。
2. 地下のコレクションをじっくりと
ルノワール、セザンヌ、ピカソ、モディリアーニ。20世紀初頭の巨匠たちの作品が、コンパクトな空間に凝縮されています。
3. もう一度、モネのもとへ
全部見終わったら、もう一度『睡蓮』の部屋に戻ってみてください。最初に見たときとは、違う感覚があるはずです。
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さいごに
オランジュリー美術館でしか体験できない、モネの集大成『睡蓮』。360度パノラマに配置された作品に囲まれると、そこは美術館ではなく、モネが愛したジヴェルニーの池にいるような気持ちになります。
さらに、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ、モディリアーニなど、20世紀初頭の巨匠たちの名作が、この空間を豊かに彩ります。
コンパクトながら濃密な展示内容と、静寂に包まれた睡蓮の瞑想空間。心を整えるようなひとときを過ごせば、美術館を出るころには、自分自身の内側に静かな調和が訪れているでしょう。
オランジュリー美術館
入場料: 12.50€
開館時間: 9:00〜18:00 (火曜休館/ 金曜日21時まで)
公式サイト: オランジュリー美術館
▶︎ セーヌ川を眺めながらのクルーズで、オランジュリー美術館へアクセスできます。
無料開放日: 第1日曜日(要予約)
所要時間: 2時間ほど
空いている時間帯: 午前中
作品の数: 約150点
作品の種類: 絵画、オブジェクト
芸術形式: 印象派、ポスト印象派
ロッカー: あり(大型のみ)
ショップ、カフェ: あり(地下1階)
オーディオガイド: あり(日本語、5€)
住所: Jardin des Tuileries Place de la Concorde, 75001 Paris
アクセス: コンコルド駅(Concorde)Metro1、8、12号線より徒歩約3分
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