パリで私が好きな美術館のひとつ、パリ市立近代美術館(Musée d’Art Moderne de Paris)。友人に観光でおすすめするなら、ここも間違いなくリストに入れます。エッフェル塔のほぼ向かいに位置するので、午前中にエッフェル塔を登ったあと、ゆったりと美術館で休憩しながら芸術鑑賞の時間を持つことができます。
1937年のパリ万国博覧会のために建設されたパレ・ド・トーキョー東館に、1961年に開館。ここには、20世紀から現代にいたるフランス芸術を中心にした絵画、彫刻、デザイン、写真、ビデオアートなど約15,000点のコレクションが揃っています。
アンリ・マティス、パブロ・ピカソ、アメデオ・モディリアーニといった巨匠の絵画から、シュルレアリスムやモダンアート、次世代アーティストの作品まで、無料で鑑賞できます。
所蔵作品から3選
アンリ・マティス(Henri Matisse)「ダンス」(La Dance, 1931-1933

鮮やかな赤と青の対比が、シンプルな空間に生き生きと躍動しています。眺めていると、自分の呼吸まで作品のリズムに寄り添う感覚になってきます。ミニマルな構図ながらも、身体感覚に訴える力強さがあります。
巨大絵「La Dance」(ダンス)を制作しているアンリ・マティスの映像
どのように描かれたのかパネルによる説明や、当時の様子がビデオで残されていて、彼の愛犬と一緒に作業に向かっているアンリ・マティスが見ることができます。また、巨大なキャンバスに描かれたこの作品は、マティスの代表作のひとつで、彼の色彩へのこだわりとエネルギーが感じられる1枚です。
モディリアーニとスーティン:対照的な画風に宿る深い絆

エコール・ド・パリを代表するイタリア出身の画家・彫刻家、アメデオ・モディリアーニ(Amedeo Modigliani)。パリ市立近代美術館が所蔵する「青い目の女」(1918年頃)は、彼の典型的な作風を示す傑作です。細長く引き伸ばされた首、アーモンド型の瞳、シンプルな線描という独特のスタイルは、アフリカ彫刻やイタリア・ルネサンス絵画の影響を融合させた革新的な表現です。
「青い目の女」に込められた愛
このモデルは、モディリアーニの内縁の妻ジャンヌ・エビュテルヌ(Jeanne Hébuterne)です。1917年に出会ってから1920年に彼が亡くなるまでの3年間、彼はジャンヌの肖像画を20点以上制作しました。この作品には、愛する女性への深い情愛が静かに漂い、そしてどこかミステリアスな余韻を心に残します。
隣り合う二人の友情
その隣に展示されているのは、シャイム・スーティン(Chaïm Soutine)の作品です。2人は1913年頃、パリ15区にあったコミューン(集合アトリエ兼住宅)「ラ・リュッシュ(蜂の巣)」で出会いました。マーク・シャガールやオシップ・ザッキンらと共に、貧しくも創造的な日々を過ごした仲間です。
モディリアーニはスーティンの肖像画を何度も描き、二人は深い友情で結ばれていました。モディリアーニは酔った状態を冗談めかして表現する際、「すべてがスーティンの風景画のように踊っている」と言ったといいます。スーティンの激情的でうねるような画風を、ユーモアを交えて的確に捉えた言葉です。
対照が生む美しさ
モディリアーニの洗練された線描と静謐な色彩。スーティンの激情的な筆致と渦巻くような構図。まったく異なる二つの画風が隣り合うこの展示構成は、エコール・ド・パリの芸術家たちが持っていた友情と多様性を象徴しています。それぞれが独自の表現を追求しながらも、互いを尊重し、刺激し合った時代の息吹を、現代の私たちも感じ取ることができる貴重な空間となっています。
エドゥアール・ヴュイヤール(Édouard Vuillard, 1868-1940)「モーリス・ドゥニの肖像」(Portrait de Maurice Denis, 1930-1935)

彼の絵は、日常の何気ない一瞬をそっと切り取ったようで、写真のように鮮やかでありながら、写真では感じられない温もりがあります。まるで、静かな室内にそっと息づいているかのようです。
ヴュイヤールは、「アンティミスト(親密派)」とも呼ばれ、親しい人々や身近な日常の光景を、優しく、繊細なタッチで描きました。彼の作品を前に、自然と足が止まり、心がふわぁっと暖かくなり、また色彩からセンチメンタルにも感じ、なんともいえない哀愁を感じました。
ナビ派の繊細な世界
ヴュイヤールは、ナビ派の中心的メンバーとして活躍したフランスの画家です。この作品は、モデルとなっているドゥニがルーアンのフランシスカン修道会の礼拝堂の装飾作業に従事している場面を描いており、彼の芸術家としての姿勢や内面を表現しています。
ナビ派の特徴である平面的な色面構成と装飾的なパターンを、より洗練された形で表現しており、親密な雰囲気と繊細な色彩感覚が際立ちます。
パリ市立近代美術館|訪れるヒント

館内に足を踏み入れると、目の前に案内カウンターがあります。無料の冊子とオーディオガイドを手にいれ、階段を上がれば4/5階へ。ぐるっと部屋を囲むように、色彩の魔術師といわれたラウル・デュフィ(Raoul Dufy)の大作、「電気の妖精」(La Fée Electricité, 1937)が迎えてくれます。
おすすめ時間と所要時間
おすすめは平日の10時から13時ころ。私が訪れたのは火曜日10時過ぎ、開館と同時に入りましたが、並ぶことなく入場できました。
所要時間は、だいたい2時間ほどで館内を回れます。また、展示室には椅子が置かれているので、お気に入りの作品の前でゆったりと座って鑑賞することもできます。オーディオガイドの解説を耳にしながら、当時の時代背景を思い描いたり、アーティストの気持ちをそっと想像したりしていると、気づけば3時間ほどがあっという間に過ぎていました。
実際の空間の迫力や色彩の魔術は、文章では伝えきれません。Instagramでは、館内の様子や他の作品もシェアしています。→ Instagramを見る
ブックショップとレストラン
館内には、アートにインスパイアされたグッズが揃うブックショップがあり、展示アーティストに関連した本や文具、ポストカードなどを手に取ることができます(ブックショップ詳細はこちら)。
また、鑑賞の合間には、景色を眺めながらリラックスできるレストラン「Forest」でひと休みするのもおすすめです(レストラン詳細はこちら)。夏はテラスで、秋からは屋内で、地元の食材を使った季節の料理を楽しみながら、アートの余韻に浸る贅沢な時間を過ごせます。
さいごに
パリ市立近代美術館の常設展は無料で、アンリ・マティスやパブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックといった名作を静かに眺めることができます。特別展は有料ですが、事前チケットでスムーズに入館可能です。
シンプルで優雅なアール・デコ建築は作品を引き立て、目の前にはエッフェル塔、近くにはシャンゼリゼもあり、トロカデロ駅から徒歩圏内とアクセスも便利。
美術館周辺には観光スポットも多いため、1日の観光プランに組み込むこともできます。静かな鑑賞と街歩きを同時に楽しめる、贅沢な午後を過ごせる場所です。
パリ市立近代美術館(Musée d’Art Moderne de Paris)
入場料:無料(企画展は有料の場合あり)
開館時間:10:00〜18:00(月曜休館/木曜10:00〜21:30)
公式サイト:パリ市立近代美術館公式サイト
作品の数;約15,000点
作品の種類:絵画、彫刻、デザイン、写真、ビデオアートなど
所要時間:2〜3時間
空いてる時間帯:10時〜13時頃
住所:11 Avenue du Président Wilson 75116 Paris(Map)
