ベルリンで本格的な現代アートを体験したいなら、ハンブルガー・バーンホフ美術館(Hamburger Bahnhof)は外せません。19世紀の駅舎が美術館へと生まれ変わったこの空間は、ヨーロッパ屈指の現代美術コレクションと圧倒的なスケール感で、訪れる人々を魅了し続けています。本記事では、実際の訪問体験をもとに、ご紹介します。
ハンブルガー・バーンホフ美術館 – 国立現代美術館

ハンブルガー・バーンホフは、ドイツ語でハンブルク駅を意味します。その名が示す通り、もともとは1847年に建設された鉄道駅でした。建築家フリードリヒ・ノイハウス(Friedrich Neuhaus)による設計で、ドイツ最古級の駅舎の一つとされています。第二次世界大戦で被災後、長らく廃墟でしたが、1984年にベルリン州政府が取得し、建築家ヨーゼフ・パウル・クライヒューズ(Josef Paul Kleihues)の手によって改修されました。
1996年に現代美術館として再生され、隣接する建物(リークハレン)の改築により、大型インスタレーションやメディア・アート、環境アートなど多彩な作品を収蔵・展示できるようになりました。所蔵作品数は約1,500点にのぼり、館内の広い展示室だけでなく、屋外や階段、さまざまな空間に作品が配置され、産業遺産と最先端アートが融合するこの空間は、創造と再生の街ベルリンを象徴する場所といえるでしょう。
モードな美術館体験ができる理由
パリのオルセー美術館も駅舎を改装した美術館ですが、ハンブルガー・バーンホフは趣が異なります。ここは単に美術品を展示する場所ではなく、アートを全身で体感する空間です。
約13,000平方メートルの広大な展示スペースには、1,500点を超えるコレクションが収蔵されており、大型インスタレーション、メディアアート、環境アートなど、多彩な表現が楽しめます。元プラットフォームや階段、屋外空間までもが展示エリアとして活用され、建物全体がひとつの巨大なアート作品のようです。
特別展示『embrace』シャネル支援プログラムによる圧巻のインスタレーション
2025年の訪問時、開催中だったのはチェコ出身のアーティスト、クララ・ホスネドロヴァ(Klára Hosnedlová)による特別展示『embrace』です。シャネル(CHANEL)の文化支援プログラムの一環として制作されたこの作品は、会場の規模と芸術性において圧倒的な存在感を放っていました。
五感で感じる森の物語
元プラットフォームの空間を存分に活かした、縦にも横にも奥行きもある巨大なインスタレーション。ガラス、コンクリート、亜麻、麻、糸、砂、金属、そして音から構成されたこの作品は、圧巻の一言に尽きます。その中を歩いていると、だんだんとその物語の中に迷い込んでいきます。
ところどころに置かれたアナログのスピーカーから低音のベースが響き、目を閉じると、漆黒の森の中にいるようです。目を開けると、見る角度によって解釈が変わります。木が年月をかけて絡み合ったのか、狼の尻尾なのか、はたまた絨毯の中に入ってしまったのか。オブジェクトの周りを歩くたびに、新しい表情を見せる。外から眺めると、真っ白の空間に突如と現れた森と川のようにも見えるのです。
常設コレクション|ポップアートから社会派作品まで
ハンブルガー・バーンホフの常設コレクションは、1950年代以降の現代美術を網羅しています。アンディ・ウォーホル、ヨーゼフ・ボイス、ロイ・リキテンスタインといった巨匠から、新進気鋭のアーティストまで、多様な作品が展示されています。
ジェレミー・ショウ(Jeremy Shaw)『Phase Shifting Index』2020年
ベルリンを拠点とするアーティスト、ジェレミー・ショウ(Jeremy Shaw)による没入型の7チャンネル・ビデオ・インスタレーションが、ハンブルガー・バーンホフ美術館の『Museum in Motion』で展示されています。
薄暗い空間の中に点在するスクリーンには、さまざまな音楽シーンの映像が映しだされています。セラピー的なダンス、コンテンポラリーダンス、クラブで踊っている人などが映っています。
後方のベンチに座ると、すべてのスクリーンを一望できます。最初はバラバラだった映像と音楽が、徐々にクライマックスへと向かい、人々のエネルギーも高まっていきます。そして最後、すべてのスクリーンが真っ白に染まり、ただ一音だけが静かに残ります。
思考|作品が問いかけるもの
ただ映像を見ているだけなのに、意識がだんだん上昇していくような感覚になりました。地球にはさまざまな文化があり、人はそれぞれ好きなものに没頭し、エネルギーを高めていく。一見異なることをしているようで、すべて同じ空間で存在しており、そして同じ瞬間を共有している。この展示場のように、いろんな場所から来た人々が、いま同じ空間で、同じものを見ているように。
また、同時に、この映像を通して見えるのは、ニルヴァーナ(涅槃)へ到達するということ。それは一瞬の悟りかもしれない。でもそこにたどり着くために、煩悩に悩まされながらも、無心な状態へ、光悦な状態へと目指す。それが人間の営みなのかもしてないと考えていました。
ハンブルガー・バーンホフ美術館|訪れるヒント
平日午前中または木曜夜がおすすめ
週末は混雑しやすいため、平日の午前中が狙い目です。また、木曜日は20時まで開館しており、夕方以降は比較的ゆったりと鑑賞できます。
所要時間の目安
- 特別展のみ: 1〜1.5時間
- 常設展を含む: 2.5〜3時間
- じっくり全体鑑賞: 3〜4時間
広い空間を歩き回るため、途中でカフェやベンチで休憩を挟むことをおすすめします。頭を整理することで、次の作品への感覚も研ぎ澄まされます。
季節と時間帯による変化
自然光が差し込む時間帯は、作品の印象が大きく変わります。特に屋外彫刻やガラスを使った作品は、光と影の演出が美しく、季節や天候によって異なる表情を見せます。
ミュージアムショップは必見
ポストカード、アートブック、デザイン雑貨など、センスの良いアイテムが揃っています。お土産探しや、見ているだけでも楽しい空間です。
夏のイベント『Berlin Beats』
6月から8月末まで、美術館の庭園で『Berlin Beats』というエレクトロ音楽イベントが開催されます。入場無料で、ベルリンのアンダーグラウンド・カルチャーを体験できる貴重な機会です。
さいごに
ハンブルガー・バーンホフ美術館は、19世紀の駅舎という産業遺産と21世紀の前衛芸術が出会う、ベルリンならではのユニークな美術館空間です。ヨーゼフ・ボイスやアンディ・ウォーホルといった巨匠たちの重要作品を、歴史的建造物の圧倒的なスケール感の中で体験できる贅沢な空間となっています。
ベルリンを訪れる際には、現代美術ファンはもちろん、ベルリンのモードな雰囲気を味わいたい方にも、心からおすすめできる美術館です。ぜひ時間をたっぷり取って、この唯一無二の空間をお楽しみください。
ハンブルガー・バーンホフ美術館(Hamburger Bahnhof)– Nationalgalerie der Gegenwart
開館時間: 10:00〜18:00(木曜10:00〜20:00/土・日曜11:00〜18:00/月曜休館)
入場料: €16(常設・特別展)
公式サイト: ハンブルガー・バーンホフ(Hamburger Bahnhof)公式サイト
ハンブルガー・バーンホフ博物館は人気のため、事前予約がおすすめです。
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混雑状況: やや混んでいる
その他: 車椅子対応(一部施設)、ロッカー、オーディオガイド利用可能。
住所: Invalidenstraße 50-51, 10557 Berlin, Germany
アクセス: U-Bahn(地下鉄)S-Bahn(市電・郊外電車)ベルリン中央駅(Hauptbahnhof)徒歩約5分
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