ノイエ・ナショナルギャラリーを訪れて

モダンアートを包み込むガラスの祠

ポツダマープラッツ駅(Potsdamer Platz)から10分ほど歩くと、ガラスでできた四角い箱のような建物が、階段の上にぽこっと立っているのが見えてきます。建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)設計のもと、1968年に完成したノイエ・ナショナルギャラリー(Neue Nationalgalerie)。

建物は、ミニマルでモノトーン、コンクリートと茶色の木で構成されています。エントランスに入ると、無機質に見えながらも、どこか温かみを感じます。

ノイエ・ナショナルギャラリーの展示構成:複数展覧会が同時開催

地下に降りていくと、右手には、所蔵作品から「Extreme Tension. Art between Politics and Society」(2026年1月まで)がテーマのものが展示されており、1945年から2000年に至る作品の軌跡を辿ることができます。

そして、その隣にはYoko Onoの「DREAM TOGETHER」展、左手にはGerhard Richterの「100 Works for Berlin」(2026年9月まで)が展示されています。さらに庭園ではFujiko Nakayaの作品も鑑賞できるという、充実した展示構成です。

ノイエ・ナショナルギャラリーのコンテンポラリーアート:来館者と作品の相互作用

館内の中央には、石を使ったコンテンポラリーアートが設置されており、訪問者が自由に動かせるようになっています。時々聞こえる石が崩れる音は、芸術と時間、そして人為的な介入について深く考えさせてくれます。その音を背景にしながら、常設展を巡るという、他では得られないユニークな体験ができました。

来館者が自由に動かせる石のアート作品から聞こえる崩れる音。この音は、時間の経過、人為的な介入、そして無常性についての深い思考を促します。

ベルリンのモダンアート:PicassoからJacomettiまで

ベージュの絨毯が敷かれたギャラリーには、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)やヴィクトル・ブローネル(Victor Brauner)などの巨匠の作品が配置されています。中央にはJacomettiの彫刻が「Welcome(ようこそ)」と言うかのように立ち、訪問者を迎えます。

展示は年代別にセクションが分かれており、19世紀後半から20世紀にかけてのモダンアート、キュビスム、ダダイズム、産業工業アートを系統立てて鑑賞できます。ルネサンスやロマン主義といった古典的な作品は、絵画館やベルリニッシェ・ガレリーなどで見ることができますが、ここで提示されているのは、近代の激動の中で生まれた芸術です。

東ドイツ(DDR)時代の美術:ベルリンの歴史が刻まれた作品

特に注目すべきは、東ドイツ(DDR)時代と東ベルリンの雰囲気を描いた作品たちです。これらの作品に共通するのは、淡くカラフルというよりも、太く力強い線で描かれた独特のスタイル。

暗くて豊かな色彩が支配的で、歪んだ顔や不安そうな表情が繰り返し現れます。全体的に暗くてネガティブな印象を受けるのは意図的なもので、その時代の政治的緊張と社会的混乱が、作品を通じて伝わってきます。これらの作品は、単なる歴史的記録ではなく、時代の感情そのものの表現です。

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ノイエ・ナショナルギャラリーの見どころをもっと知りたい方へ

この記事で紹介した作品のほかにも、ノイエ・ナショナルギャラリーの展覧会には、魅力的な作品がたくさんあります。実際の展示の雰囲気や詳細な写真は、ぜひインスタグラムでチェックしてみてください。会場の空気感や光の使い方など、文章では伝わらない魅力が満載です。→ [Instagramはこちら]


さいごに

ノイエ・ナショナルギャラリーは、20世紀の激動を映す芸術と、光と素材の洗練された建築が一体となった総合芸術作品です。ミース・ファン・デル・ローエによるガラスと鉄骨の極限までシンプルな外観からは想像もつかない、まるでパンドラの箱を開けたように、その内部では、激動の20世紀を生き抜いた芸術家たちの魂の叫びや、激情的で多様な表現が次々と現れます。

無機質でミニマルな空間の静けさと、そこに満ちる芸術の豊かさとの対比が、訪れる人に深い感動をもたらします。ベルリンを訪れる際は、外観の潔さに隠された内なる情熱と創造のエネルギーを感じに、ぜひこの特別な空間を体験してみてください。

新国立ギャラリー:ノイエ・ナショナルギャラリー(Neue Nationalgalerie)

開館時間:10:00〜18:00(月曜休館/ 木曜10:00〜20:00)
入場料金:20ユーロ(木曜日16時から入場無料)
公式サイト:Neue Nationalgalerie(ノイエ・ナショナルギャラリー)

所要時間:3~4時間
混雑状況:比較的空いているのは、平日10時〜15時頃
▶︎ 事前に予約して行列を避けたい方は、Neue Nationalgalerie入場券はこちらから(Getyourguide)

開館: 1968年(2021年、デイヴィッド・チッパーフィールド・アーキテクツ(David Chipperfield Architects)による改修を経て再開館)
建築家: ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)
住所 Potsdamer Straße 50, 10785 Berlin, Germany  
アクセス:地下鉄U2線で「Potsdamer Platz」駅から徒歩5分ほど

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