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山種美術館のカフェ&ミュージアムショップ詳細レポート
―ビジネスシーンに日本画が浸透するきっかけに。

ARTHOURSでは、これまで「ビジネス×アート」をキーワードに、アート書籍の紹介や美術展レビューなど、もっとアートを身近に感じて頂けるよう、様々な切り口でビジネスパーソン向けのトピックをご紹介してきました。

一旦、2020年春に発令された緊急事態宣言によって、こうしたトピックはお休みしていましたが、この秋からまた再始動していきます。具体的には各美術館の常設展示やアートフェアの取材レポート、またミュージアムカフェ、ミュージアムショップなど美術館・博物館の展示以外の部分にも積極的に着目していきます。

その再開第1回となる今回は、日本画の殿堂・山種美術館様を取材させて頂きました。着目したのは、国内屈指の美術館カフェとして知られる「Cafe 椿」や、コラボグッズなどでヒットを連発するなど、ファン目線での運営がうれしいミュージアムショップの2つ。

今回は、館長・山崎妙子さんにお話を伺いながら、それぞれのサービス内容や特徴、そしてビジネスパーソン向けの利用法なども教えて頂きました。

山種美術館の特徴とは

まずは、簡単に美術館についてご紹介しておきましょう。山種美術館は、1966年、美術館名の由来にもなっている創立者・山崎種二(やまざきたねじ)が設立した近代・現代日本画を中心とした日本美術を専門とする美術館。横山大観や東山魁夷など、誰もが知るようなビッグネームの作品を筆頭に、約1800点のコレクションを所蔵する、近代・現代日本画の殿堂として多くのファンに愛されています。

日本画と聞くと、一見おごそかで敷居の高い感じがしますが、山種美術館に限っては全くそんなことはありません。3代目となる現館長・山崎妙子さんを中心に、形に囚われない斬新な運営手法で、従来からの熱心なファンはもちろん、若者やビジネスパーソンなどからも幅広い支持を集めています。

そんな山種美術館の魅力の一つが、今回ご紹介するミュージアムカフェ「Cafe 椿」と魅力的なアイテムぞろいのミュージアムショップ。それぞれ、掘り下げて見ていきましょう。

ミュージアムカフェ「Cafe 椿」

山種美術館が主力としてコレクションしている日本画の巨匠・速水御舟(はやみぎょしゅう)の代表作品「名樹散椿」(めいじゅちりつばき/重要文化財)にちなんで名付けられたミュージアムカフェ「Cafe 椿」は、同館の先進性を象徴するような人気カフェ。

2009年秋に現在の広尾に美術館が移転したとき、「もっと来館者のみなさんにゆっくりとくつろいでいただきたい」という思いで設けられた、オリジナリティあふれるミュージアムカフェです。

それでは早速覗いてみましょう。

もっと重厚で和風なしつらえになっているのかと思ったら、意外にも明るくカジュアルな雰囲気でまとめられています。カフェテーブルと椅子を見ると、すべてイタリアの名門ブランド「カッシーナ・イクスシー」社のもので統一されています。

日本画を専門とするカフェなら、畳敷きでお抹茶をいただくのかな・・・とつい先入観で考えてしまうかもしれません。 山崎館長にお聞きしました。

山崎 :移転前の美術館(千代田区・三番町)は場所が狭くて、カフェスペースがなかったんです。美術館の周囲にもカフェが少なくて、お客様から館内にお茶を飲める場所があればいいのに・・・と言われていたので、2009年にこちらに移転する時には、お客様をもてなすためにしっかりとしたカフェを作ろうと考えていました。

―でも、今でこそ広報活動や口コミでCafe 椿は有名になりましたが、オープン当初はこんなに素敵なカフェがあるというのを知っているアートファンは少なかったですよね。

山崎 :確かにオープン時はまだあまり知られてなかったんです。たまたま美術館に来てみたらいい感じのカフェがあって、面白いお菓子があったよ・・・といったような感じで、SNSや口コミを通して広まっていきましたね。

―ちなみに、ビジネスパーソンでカフェを利用する人はいらっしゃるのでしょうか?

山崎 :最近はかなり増えました。展示を見ない方でも普通にカフェとして利用できるようになっていますので、恵比寿近辺で働いている方が商談の場として活用していたり、お一人でいらしてパソコンを開いている方も増えましたね。

―静かな大通り沿いに面していて、窓が大きくて開放的なのもうれしいですね。

山崎 :そうですね。光を多く取り入れられる設計にこだわりました。また、特にBGMなども流していないので、雑音が少なくて打合せや作業に集中できるのも重宝されているようです。最近は電話などで、打合せのための座席予約の問い合わせをいただくこともも多くなりましたね。

まるでホテルロビーのような高級感があるのに、ふらりと立ち寄れる気軽さもあるCafe 椿。ビジネスユースでも使えそうです。それでは、こちらのおすすめメニューを紹介しておきましょう。

Cafe 椿 おすすめメニュー1:「菓匠・菊家のオリジナル和菓子5種」

Cafe 椿で不動の人気を誇るベストセラーメニューがこちらの5種類の和菓子。山種美術館では、展覧会が毎年5~6回開催されていますが、開催ごとに展示される日本画の中から毎回5作品をピックアップして、その絵画のモチーフを取り入れた期間限定の和菓子が5種類ずつ登場します。

2009年に同館が広尾でオープンして以来、毎回欠かさずこの5種類の和菓子を手掛けてきているのが、東京・青山の老舗菓匠「菊家」です。山種美術館とは、1974年にオープンして以来の約50年のお付き合いだといいます。

2020年11月15日まで開催された特別展「竹内栖鳳《班猫》とアニマルパラダイス」では一番人気だった和菓子「夜のみなも」。こしあんから顔を覗かせるのは水面に映った満月。風流ですね。

展示作品を絶妙にトレースしつつ、上品な色合いで可愛らしくまとめられた和菓子は、ちょっとした「食べるアート」ともいえそう。筆者も、もう数え切れないほど食べていますが、上品な甘みはコーヒーや抹茶と抜群の相性で、病みつきになります。

また、いつ頂いても和菓子が新鮮でみずみずしいのも嬉しいところ。実は、その日にカフェで提供される和菓子は、必ずその当日に作られています。一番良い状態の和菓子を食べられるようにと、開館前になると、菊家さんが毎日軽トラで作りたての和菓子を直接運んできてくれるのだそうです。

それにしても、展覧会が開催されるたびに、和菓子を毎回新しく考案するのは結構大変な作業なのではないでしょうか? 山崎館長に聞いてみました。

山崎 :そうですね。毎回和菓子にはかなり力を入れて企画しています。次回の展覧会に出品される予定の作品リストが固まったら、菊家さんに作品画像を渡して、まずは自由にご提案いただいています。その中から、私や学芸員、職員、カフェスタッフが味や見た目などをチェックして、何度も試作を重ねていきます。

―特にこだわっていらっしゃる点はありますか?

山崎 :やはりお客様の口に入るものなので、(作品に似せようとするあまり)色が派手になりすぎていないか、モチーフが美しく再現できているかなど、色々と気を遣っています。

また、このお菓子はお店でコーヒーや抹茶とセットで注文できるだけでなく、2つ以上購入すると専用の紙箱に入れてお土産としても持ち帰ることができます。

山崎 :特にコロナ禍が深刻になってから、自宅用に買いに来てくださるお客様も増えました。また、営業等で客先を訪問する際の手土産としても好評なので、ビジネスパーソンの方にもぜひご利用いただききたいですね。

Cafe 椿 おすすめメニュー2:「オリジナルにゅう麺」

さて、こちらではカフェだけでなく、軽食もしっかりいただけるようになっています。そこでお薦めの人気メニューが、「にゅう麺」です。そうめんを温かいだし汁でいただく、関西でよく食べられているメニューですね。東京では珍しいかもしれません。健康にも良いイメージがあるため、昼時を中心として注文している人が目立ちます。

「にゅう麺」950円

山崎 :胃に優しく、もたれないにゅう麺は、男女問わず人気があります。もし量的に物足りないな、と思われた場合は、「おこわのおにぎり」をプラスメニューとしておつけできます。外回りの男性の方にはこちらもおすすめですね。

意外にもビジネスパーソン向けのアイテムがゴロゴロ?!ミュージアムショップも凄い!

さて、こちらカフェではお腹いっぱいになったところで、ミュージアムショップに移動しましょう。ミュージアムショップは、地下1Fの展示室内に併設されています。

こちらのミュージアムショップでは、山種美術館が所蔵する名品の数々の中から、特に人気のある主力作品をモチーフに様々なオリジナルグッズを製作。企画展/特別展を開催するたびにスタッフ全員で意見を出し合って、毎回2~3点は最低でも新作を企画・販売するそうです。

ここ数年でSNSなどで最も大きな話題になったのは、人気のアプリゲーム「明治東亰恋伽~ハヰカラデヱト~(通称「めいこい」)」とのコラボ商品。発売時は、全国各地から熱心なファンが「めいこい」グッズを買い求めに来館。キャンペーン期間中、筆者も何度か「めいこい」ファンで熱気あふれるショップの中に居合わせたこともありました。

©MAGES./LOVE&ART / 2019年春に開催された「花・Flower・華―四季を彩る」で実施されたアプリゲーム「明治東亰恋伽~ハヰカラデヱト~」とのタイアップグッズ。大人気でした。

正直なところ、展示を見る前は、どちらかというとグッズが主目的で、日本画はおまけみたいな感じで訪問した人も多かったのではないかと思います。

しかし、ゲーム内のキャラクターである横山大観や菱田春草が描いた実際の作品を展示室で見て、美術館を出る頃ににはゲームだけでなく本当に日本画のファンになってしまったファンが続出。まさに日本画の美術作品としてのパワーを感じたコラボイベントでした。

山崎 :「めいこい」とのコラボグッズの販売を通して、新たに日本画そ好きになってくださった若い方が本当に増えましたね。

コラボグッズがもたらした好循環。ミュージアムショップ運営の一つの理想形といえるでしょう。

山崎館長から、ARTHOURS読者のために、ビジネスシーンやオフィス内で重宝しそうな、ビジネスパーソン向けのグッズもご紹介頂きました。

ビジネスパーソン向けお薦めグッズ1:「オリジナルふせん」

「オリジナルふせん」(各385円)

山崎:働いている方向けということでしたら、まずお薦めなのが付箋ですね。当館では現在4種類を展開しています。是非お仕事で使って頂けると嬉しいです。ユニークな人物が描かれているので、書類と一緒に見えた時に、仕事仲間や他部署の人にくすっと笑ってもらえるのではないかと思います。

特にゆるい感じの和ませてくれる付箋がこちらの「歌川広重(初代)《東海道五十三次》ふせん」

山崎 :こうした見て楽しめるモチーフから、もっと日本画にも興味を持っていただけるとより嬉しいですね。

ビジネスパーソン向けお薦めグッズ2:クラフトチョコレート専門店「CRAFT CHOCOLATE WORKS」とのコラボチョコレート

クラフトチョコレート (各1,620円)

続いては、山種美術館で昨年から発売されてから、瞬く間に同館の人気商品となったクラフトチョコレート。速水御舟「翠苔緑芝」(すいたいりょくし)に登場するネコとウサギが包装紙に使われています。

山崎 :こちらは晩秋以降、寒い時期だけの限定商品なのですが、チョコレートファンには有名な三軒茶屋のCRAFT CHOCOLATE WORKSさんとのタイアップ商品です。ビーントゥバー製法で作られたクラフトチョコで、毎年少しずつ味が変わるのが特徴なんです。

―凄く個性的ですが、さっぱりして美味しいです。これは癖になりそうですね?!

山崎 :SNSでも「変わった味だけど美味しい!」と評判です(笑)。いつも南米コロンビアの同じ畑の同じ木から取れたカカオ豆を使っているのですが、気候の影響で、毎年若干味が変わってくるのも面白いところなんです。ビーントゥバー製法のクラフトチョコレートは今ちょっとしたブームなので、ぜひ当館オリジナルパッケージと合わせて楽しんでくださいね。

ビジネスパーソン向けお薦めグッズ3:「若冲ピンバッジ」

左:「ぽち袋 伊藤若冲《伏見人形図》」(418円)/右:「ピンバッジ 伊藤若冲《伏見人形図》(770円)

今や国民的人気となった江戸時代の絵師・伊藤若冲は、超絶技巧な写実作品から、軽妙で洒脱なかわいい作品まで様々な作品を描いています。山種美術館で所蔵するのは、コロコロと太った伏見人形が並んで描かれた「伏見人形図」。年末年始の展覧会で展示されることが多い縁起の良い作品です。

2020年春、こちらをピンバッジ化。ゆるカワな雰囲気がそのまま写し取られていて、見ているだけで和んできます。バッグにつけたり、ジャケットの胸元に飾ったりと、意外とビジネスシーンでも活用できますよ、とアドバイスを頂きました。

年末年始の贈答用カレンダーや年賀状も受付中!

2021年オリジナルカレンダー「山種コレクション名品選」 (1,650円)

さらに、ミュージアムショップでは、法人からの一括注文も柔軟に受け付けているそうです。セミナーやイベント用などで、ポストカード等の大量注文が入ることも多いのだそうです。その時店頭に出ていなくても、倉庫に在庫が残っているケースもあるので「あきらめず気軽にお問い合わせください」とのことでした。

最後に、あまり広くは告知されてはいないものの、同館のミュージアムショップが取り扱っている便利な法人向けサービスを2つ紹介します。この二つは、これまで何十回と山種美術館に通っている筆者でも知らなかった非常にレアなサービス。「そんなサービスもあったのですか?!」と驚きでした。

その一つが、「法人向けカレンダー」販売です。

山種美術館でも、年末が近づいてくると同館の主力作品を印刷した壁掛けタイプのカレンダー「山種コレクション名品選」(1,650円)が発売されます。毎年熱心なファンに根強い人気がある定番アイテムですが、法人用に一括注文を受けることもできます。

その際、山種美術館のロゴの代わりに、あなたの会社名や部署名を入れて印刷することも可能なのだそうです。ビジネスユーザー目線に立った非常に気の利いたサービスです。

また、さらに激レアなサービスが、「年賀状印刷サービス」です。同館の館蔵品をあしらった絵柄入りの年賀状印刷を個別注文できます。年賀状と日本画は相性も抜群。干支にあった作品、正月にふさわしい縁起の良い作品をあしらった上品な年賀状は、新年を寿ぐのにぴったりです。

まとめ:カフェやショップを通して、気軽に日本画の世界を楽しんでみましょう!

一昔前までは、日本画といえば、数ある美術分野の中でもすこしとっつきにくいイメージもありました。特に、ビジネスシーンとは相容れない、縁遠いイメージが強かったかもしれません。

しかし、2010年代以降、少し状況が変わってきているようにも感じます。「カフェ」や「グッズ」といった切り口で様々な工夫を重ねている山種美術館のような先進的なミュージアムのおかげで、よりビジネスシーンでも違和感なく日本画のイメージが浸透してきています。

西洋絵画や現代アートは好きだけど、日本画はちょっとよくわからないな・・・という方は、たとえばこうした「カフェ」や「グッズ」から入ってみるのもいいかもしれません。山種美術館では、様々な入り口を用意して、あなたが日本画の魅力に気づくのを待っているはずですから!

美術館・Cafe 椿・ミュージアムショップについて

山種美術館
場所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
公式HP:https://www.yamatane-museum.jp/

Cafe 椿/ミュージアムショップ
営業時間: 美術館に準じる
(展覧会によっては変更になることがあります。)
休業日:美術館の休館日に準じる
(詳しくは年間スケジュールをご確認ください。)
TEL:(Cafe 椿)090-5202-7887/(ミュージアムショップ)03-6427-4747

文・写真 かるび

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