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「The Art Club ~アートとビジネスの原点回帰~ Vol.02」
髙倉大輔(TEZUKAYAMA GALLERY所属)×速水惟広

「The Art Club ~アートとビジネスの原点回帰」は、緊急事態宣言下で働き方が激変したビジネスパーソンの皆さまに、より多くのアーティストとの接点を提供するべくArtScouter事務局により開催されました。

初めてのオンライン開催となったVol.02は、ArtScouter登録ギャラリーであるTEZUKAYAMA GALLERY協力のもと、アーティストの髙倉大輔さん(ArtScouter登録アーティスト)、速水惟広さんにインタビュアーとしてご登壇いただきました。

100名以上のビジネスパーソンの方々にご参加いただいたイベントの内容を一部抜粋し、ご紹介致します。

速水惟広(以下「速水」と記載):本日、髙倉大輔さんとトークショーをさせていただく速水惟広と申します。髙倉さんは、現在大阪のTEZUKAYAMA GALLERYに所属される写真家です。写真家になる前は演劇に携わり、役者として活動されてきました。

その後写真活動へと転身し、現在は過去の経歴を活かして、「モノドラマティック」シリーズという、一人芝居=モノドラマと、劇的な=ドラマティックという言葉を組み合わせた独自の制作スタイルで知られます。
今日は、TEZUKAYAMA GALLERYの岡田慎平さんも交えてお話をお伺いします。

岡田慎平(以下「岡田」と記載):TEZUKAYAMA GALLERYの岡田と申します。髙倉さんとTEZUKAYAMA GALLERYが知り合ったきっかけは、髙倉さんが出展された、関西で2013年に開催された「御苗場」(おなえば)という写真の公募展でした。

この時、審査員として参加していたTEZUKAYAMA GALLERYが髙倉さんにギャラリー賞を出したことがきっかけで、お付き合いがスタートしました。それ以来、ギャラリー主催の個展やグループショー、海外のアートフェアにも出展するなど、継続的に作品を発表して頂いています。

速水:TEZUKAYAMA GALLERYから見て、髙倉さんの作品の魅力はどのようなところにあるのでしょうか?

岡田:オリジナリティの高さです。髙倉さんご自身のルーツである演劇と上手く結びつけながら、フォトモンタージュというコラージュの技法を多用した「モノドラマティック」シリーズは非常に独創的ですね。

速水:髙倉さんの場合、ご自身のルーツである「演劇」がオーセンティックな言葉や表現として作品に昇華されているのが素晴らしいですよね。 

岡田:そうですね。

髙倉さんが演劇から写真へと表現活動の軸足を移したきっかけとは

速水:それでは、髙倉さんがアーティストを志したきっかけや、独自の表現スタイルを会得するに至った経緯をお聞かせ頂けますか? 

髙倉大輔(以下「髙倉」と表記):正直なところ、はっきりしたきっかけは自覚がないんです。物心がついた頃には、友達同士で集まる幼稚園の誕生日会のような場所で演劇ごっこをしていた記憶があるんですね。何かきっかけがあって・・・というよりは、演劇を作っていたのがスタートと言うか。

速水:すごいですね。幼稚園の頃から、すでに演劇を作っていた。

髙倉:父親も兄二人も普通に会社員で、家族には創作活動しているような人がいませんし、なぜ自分が演劇に興味を持ったのだろうかというのは、自分でも正直わからないです。今思い返すと最初に演劇を一緒にやった幼稚園の幼馴染は、今も現役のアーティストとして絵を描いていますので、もしかしたら彼女や他の友達からも影響を知らず知らずのうちに受けていたのかもしれません。

速水:それは凄い!幼稚園からのクラスメイトが共にアーティストになるケースはかなり珍しいですよね。では、学生時代の時はどういう感じだったのでしょうか? 

髙倉:中学や高校時代では一応バトミントンをやっていましたが、ほぼ帰宅部みたいな感じでした。家でよくRPG系のテレビゲームをやっていた思い出がありますね。もしかしたらそういうところから物語が好きになって・・・というのはあるかもしれません。

でも、学園祭では友達を集めて、相変わらず演劇みたいなものを毎年やっていました。演劇部だったわけでもないのですが、自分の心の内側のどこかに、演劇を作りたいという欲求があったのでしょうね。

速水:物語を作ることに興味があったというのは、現在にも続くキーワードのような気がしますね。その後、大学時代はどのように過ごしていたのでしょうか?

髙倉:大学に入って、ちょっと本格的に演劇に携わるようになりました。

速水:でも、大学時代に本格的に写真をやっていわけではないですよね?なにが、演劇から写真へ変わっていくきっかけになったのでしょうか?

髙倉:演劇部に所属しながらも、同時に編集ソフトを独学で学んで、フォトショップなどで加工して演劇のチラシを作るのも得意でした。大学卒業後も、知り合いのデザイン事務所で働きながら、大学からの仲間とユニットを組んで活動を継続していました。

結局ユニット自体は空中分解みたいな形で解散するんですが、その後、僕がフリーで他の劇団に出始めた時にも、個人的に演劇のチラシを頼まれたりすることが多かったんです。それで、ある時ふと写真を自分で撮れるともっと面白いチラシが作れるのではないかと思って、写真教室に入って2年ほど勉強してみたんです。そうしたら今度は写真作品を作るのが楽しくなってきてしまったんです。

速水:なるほど、純粋に技術を学んで写真家になったというのではなく、あくまで演劇をベースにしていた表現活動の延長線上にあったというのが高倉さんのオリジナリティの源泉なのですね。ちなみに、髙倉さんが影響を受けた写真家を教えて頂けますか? 

髙倉:実際に作品へと反映されているかは別として、考え方という点で影響を受けたのは、アレックス・プレガーさん、オノデラユキさん、志賀理江子さん、深瀬昌久さんや植田正治さんですね。

©︎髙倉大輔

演劇的要素を大胆に取り入れた「モノドラマティック」シリーズについて

速水:「御苗場」の時点では、スナップベースの作品でしたが、その後写真が非常にデザイン的になり、葛藤の中から「モノグラマティック」という作品で飛躍のきっかけを掴まれましたよね。そこで、「モノドラマティック」シリーズが誕生するまでの経緯をお聞かせいただけますか。

髙倉:これは「モノドラマティック」シリーズの最初期の作品です。当時、様々なコンペにスナップベースの写真を出していたのですが、全く受賞には至らず、思った以上にくやしかったんです。

もう一度チャレンジして賞を取りたいという気持ちになった時、そのままスナップベースの写真で続けても、大人数でのコンペ形式ではインパクトや個性に欠けるので難しいのではないかと思ったんです。

経験がまだ乏しい中で、どういう作品なら戦えるのか考えた時に、今までやってきた演劇やグラフィックデザインの技術的な蓄積を作品に織り込んで作品にすることを思いつきました。幸い、自分の周囲に知り合いの俳優もたくさんいましたし、そこから演劇を写真にしたような作品が出来上がったんです。

速水:コンペで順位がついて、自分では良いものができたと思っていても、賞にかすらなかった悔しさをバネにして飛躍されたのですね。そして、こちらが「レンズカルチャー」で「Story Telling Award」を獲得した作品ですね。

©︎髙倉大輔

髙倉:現在は、気になる俳優さんに取材して、その人自身の物語を引き出して、そこからカスタマイズして制作していくことが多いのですが、この写真では僕自身のイメージをベースに制作しました。

この俳優さんの持っている身体性みたいなものを、針葉樹林の中で撮りたいなという感覚を漠然と持ちながら、現場では自由に動いてもらって、撮りながら作り込んでいきました。

速水:世界一のPVを誇るWebマガジンに掲載されたことで、一気に高倉さんの知名度がアップしましたよね。これが、アート・ワールドに入る一つのきっかけとなったわけですが、そこからどんどん洗練されて行きますよね。これが2014年の作品で、高倉さんの代表作になりました。

©︎髙倉大輔

髙倉:これもやはりコンペで歯が立たなかった時の悔しさからスタートしています。あるコンペに落ちた時、審査員の代表をしていた方に直接アドバイスを頂けたことがきっかけでした。

僕の作品は、人が多数重なった構図の写真が多いのですが、それまでは技術的な難しさから、作中の人物がコミュニケーションを取っているポーズは避けていました。そこを改善点として指摘頂いたんです。そこで、今度は作品内でコミュニケーションを演出しようと思って工夫を重ねました。

速水:本作の裏側には、どのようなコンセプトや物語があるのでしょうか?

髙倉:これに関しては、この時はまだ俳優さんからのリサーチベースという感じではなかったのですが、一つ設定を作ることにしました。本作の場合は、いっぱい人が並んでいる手前に、何か大きい絵や美術館みたいなイメージなどの対象物があって、それに対して、色々考えている自分がいて、多面性が見えてくる中でのコミュニケーションという設定で撮っています。

速水:作品内では、人の様々な表情が表現されていますよね。人間はシチュエーション毎にある感情に支配されたり、自分の性格やペルソナを使い分けたりする一面がありますが、本作は構図以外でも、こうした気づきを引き出してくれますよね。

自分を客観的に見つめ直すきっかけをもらえるような作品だと思います。続いては、こちらの作品ですね。

©︎髙倉大輔

速水:これは2015~16年頃の作品ですが、初期の平面的な構図から、俯瞰的で奥行きのある構成へと変わってきていますよね。もう1枚、2016年の作品を見てみましょう。

©︎髙倉大輔

速水:ちなみに、髙倉さんの中で、どういう時にインスピレーションが湧くのでしょうか?

たとえば、本作のように、「今度は映画館で彼女を撮ってみよう」など、どういう時に思いつくのでしょうか。

髙倉:元々映画が好きなので、映画館という場所にも凄く興味があって、作品の中に取り入れたいと思っていました。でも、誰でも良いわけではなくて、そこにきちんと自分を乗せられるエピソードを持っている人で撮りたかったんです。

そんな時、たまたま作品に合いそうな方と面談した際に、その方が映画に詳しい人でした。そこで、撮影日までに好きな映画を30個くらい挙げて頂き、それぞれの映画を3人グループで観ている私という設定を作って、映画館には様々な物語があって、それを色々な感情を持った自分が見るという物語を描いて撮影しました。

速水:髙倉さんの作品が海外でもしっかり評価されるのは、作品として成立しながらも、そこに一度見たら忘れられないようなキャッチーなインパクトがあることですよね。1枚の絵としての強さがある。また、1枚の写真の中に豊かなストーリーがあるので、鑑賞者によって多面的な解釈も可能なのも魅力的ですよね。

髙倉:それは、いろいろな感情がある自分自身を写真に投影していたりするからなのかもしれないですね。

©︎髙倉大輔

速水:これは最新作品の一つですね。初めて縦位置での撮影となっている他、被写体ブレを取り入れるなど、新趣向が大胆に採用されていますね。

髙倉:撮影当時、モデルを務めてくれた方がちょうど大学3年生でした。俳優として演劇を続けるか、演劇から離れて就職活動をするかという岐路にさしかかっていて。一方、僕の地元で桜がきれいな場所があって、いずれ何かの機会に撮りたいと考えていました。

でも、単に桜がきれいなだけではなく、そこに何かマッチするエピソードが欲しいとなった時に、今まさに人生の岐路に立つ彼女をここで撮影することを思いつきました。

速水:被写体がブレることにより、時間の流れが明確に出ているのが本作の特徴ですよね。写真の中で、止まっているものと、動いているものの両方がある。被写体である彼女の思いとは別に動いているものがあるというのが、作品の新しいところですね。

髙倉:白い服を着ている彼女は、演劇を続けていた彼女のイメージなんです。一方、黄色い服を着ている彼女は、演劇から離れる彼女のイメージです。撮影前の面談では、恐らく彼女は演劇から離れるのかなという予感がありました。

演劇は凄くアクティブなので、自分の先を行ってしまうようなものでもあるだろうなという思いもあって、ぼかしています。そして、それを立ち止まって見ている自分も画面上に置きました。

速水:手前左側の3名で話しあっている彼女の横をパーッと抜けていくブレて映る彼女が、視線誘導的に斜めに飛んでいくと、そこでもストーリーがまた展開されています。そして、視線が終わる最後の彼女だけは、止まっていますね。

画面全体に目が行きながら、全てのストーリーをちゃんと見せようとしていますし、手前のボケた桜の美しさがブレた彼女とリンクして見えたりと、非常に完成度の高い作品だと思います。モノドラマティックのシリーズが非常に進化してきていることを実感できますし、僕はこの作品が凄く好きですね。

国内外からの反響と、今後の抱負について

速水:Forbes Lifeに紹介してもらったのが、ちょうど2014年くらいですね。

速水:こちらは清里フォトアートミュージアムのグループ展「ヤング・ポートフォリオ展」のカタログですね。本展をきっかけに、髙倉さんの作品が永久収蔵されました。これは一つのターニングポイントになりましたよね。でも、次のこれが非常に印象的です。

パリで2014年に開催された国際写真フェア「fotofever」では、髙倉さんの写真がメインビジュアルに選ばれましたよね。これは嬉しかったのではないでしょうか?

髙倉:この時は、まだTEZUKAYAMA GALLERYに正式に所属していなかった段階でした。定期的に連絡を取りあう中で、海外の写真のフェアに出してみたいとお声がけを頂きました。

自分でもまだ良くわかっていない時期で、気がついてみたらメインビジュアルになって、カタログの表紙や街中でのポスターの掲示が決まっていて、、、という状況だったんです。本当にびっくりしましたね。

速水:最後に、写真雑誌「European Photography」に取り上げられた髙倉さんの「loose polyhedron」という作品を見ておきましょう。こちらはArtScouterでも取り扱っています。

《European Photography》©︎髙倉大輔

速水:今、髙倉さんの作品が広く国内外で紹介されるようになってきていて、非常にキャリアとしていいところにいらっしゃるのだろうなと思います。最後に、今後の抱負や制作の方向性などをお伺いできますか?

髙倉:もともと舞台で演劇をしていたので、空間を使った展示が好きなんです。去年TEZUKAYAMA GALLERYで開催した個展でも、写真単体よりも展示空間全体で見せることを少し意識しました。写真の身体性にも興味が出てきたんです。

たとえば、使い捨てカメラを知り合いづてに渡していって、最終的に僕のところに戻してもらって、それを作品にしていくみたいなアイデアも実験的に試しています。もはや自分が撮るものではないかもしれませんが、カメラの即興劇につながるような作品も面白いかなと思っています。

速水:ある種「光の化石」とも言われるように、写真には時を止める永続性が備わっていますが、一方でインスタレーションのようなパフォーマティブな部分もあるわけです。

髙倉さんの作品は、もともと演劇というパフォーマンスに源泉があって、それが写真という固定された作品へ昇華されていますよね。でもこれから写真の身体性を意識することで、見せ方がパフォーマンスの領域に戻っていくような方向性を目指すというのは、もともと演劇から表現を始めた高倉さんが円環的に成長しているのだろうなというのが、僕が得た感触です。

これからの髙倉さんの作品が凄く楽しみですし、今まで髙倉さんの作品をご存知でなかった方は、ぜひこれを機会に作品をじっくりと見ていただければと思います。

髙倉:是非、お願いします。


ArtScouterは今後もビジネスパーソンがアーティストと触れ合える機会として「The Art Club ~アートとビジネスの原点回帰」を開催致します。その他のイベント情報も合わせて、TwitterFacebookにて発信しておりますので是非ご確認ください。

より多くの髙倉さんの作品をみたい、または価格を確認したい場合はこちらまでお問い合わせください。

文  かるび

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