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『ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン』に学ぶ愛される仕事の秘訣

《ニースの窓辺》1928年 油彩/キャンバス 島根県立美術館蔵

美術ブロガーの明菜です。ART HOURSでは、「ビジネスパーソンが美術展から何を学べるのか」をテーマに、オフィスから飛び出してアートから学ぶお手伝いをさせていただきます。

今回紹介するのは、1877年に生まれた画家、ラウル・デュフィ。フランスに生まれ、音楽と共に育った芸術家です。

画家としてはもちろん、テキスタイルのデザインでも活躍した人物でした。『ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン』で、その多才ぶりに刺激を受けてみてはいかがでしょうか?

デュフィとはどんな芸術家なのか?

展示風景

ラウル・デュフィの絵画を一目見れば、誰もが色彩の鮮やかさに驚くことでしょう。軽快な筆致や鮮やかな色遣いの絵画は、私たちを幸せな気持ちにさせてくれます。

デュフィが描いたのは、『生きる喜び』そのものでした。眩しいほどの海、華やかなダンスホール、コンサートの風景など、気持ちが高揚する場面を多く絵画にしています。

テキスタイル・デザイナーとしての才能

展示風景

デュフィは画家としての仕事だけでなく、衣服に使われる『テキスタイル』のデザインも手がけていました。現代ではよく見られる「アーティストとブランドのコラボ」の先駆けと言って良いでしょう。女性のファッションがリボンやレースの装飾や窮屈なコルセットから解放され、衣服を「1枚のキャンバス」に見立てられる時代になり、デュフィは活動領域を広げることができたのです。

テキスタイルを手がけるきっかけとなったのが、木版画です。1910年、詩人のギヨーム・アポリネールの依頼で、デュフィは『動物詩集またはオルフェウスの行列』の挿絵を木版画で制作しました。

これらの挿絵に刺激を受けたファッション・デザイナーのポール・ポワレは、デュフィにテキスタイルのデザインを依頼します。ポワレは『ファッション界のピカソ』とも例えられる人物。女性の衣服からコルセットを取り除くなど、20世紀のファッションに大きな革命をもたらしました。

展示風景

2人のコラボレーションによって生まれた斬新で目を引く衣服は、たちまちパリで評判となりました。デュフィらしい『生きる喜び』に満ちたテキスタイルは、本展で見ることができます。

絵画だけでなく、版画やテキスタイルにも才能を発揮していたデュフィ。そのポテンシャルの高さを目の当たりにすると、建築やインテリア、オフィスデザインなどもっと多くの領域でも活躍できたのではないか、と想像を膨らませてしまいます。

良い仕事は良い人間関係から

《公式レセプション》1942年 油彩/キャンバス 大谷コレクション

デュフィが絵画やテキスタイルで存分に才能を発揮し、『生きる喜び』を描きました。それは、周りの人と良い関係であったことも一因と考えられるのではないでしょうか?

ポワレと組んで仕事をしていたデュフィですが、絹織物のビアンキーニ=フェリエ社から声をかけられ、専属契約を結ぶことになります。ポワレとは別れなければなりませんが、デュフィはそのことを正直に伝え、ポワレも妨害することなくデュフィを送り出しました。

その後もポワレは、デュフィがデザインした同社のテキスタイルを購入してドレスを作っています。ポワレの懐の深さが分かるエピソードですよね。

展示風景

また、ビアンキーニ=フェリエ社との仕事で、デュフィは今までに無かった近代的なデザインを提案します。それは幾何学模様からテニスをする女性を描いたものに至るまで、非常に斬新なものでした。

こうした奇抜な発想に対し、同社は「大いに期待できる」と太鼓判を押します。さらに、デュフィの考えるデザインを活かすために大振りで複雑なデザインのテキスタイルを作れる織機まで開発してしまいました。デュフィに大きな信頼を寄せていたからこその行動でしょう。

私たちの身に置き換えても、同じことが言えますよね。上司と部下の関係が良い職場では、自然と前向きに仕事に打ち込むことができます。デュフィとポワレ、またデュフィとビアンキーニ=フェリエ社との関係は、ビジネスの上で理想的な間柄だったのではないでしょうか?

コラボレーションの先駆け

《ヴァイオリン》1989年(デザイン1914-20年頃) 毛織物 デュフィ・ビアンキーニ蔵

デュフィとポワレ、またデュフィとビアンキーニ=フェリエ社の関係は、近年のアーティストとブランドのコラボレーションに似ていると思いませんか?

高級ブランドの革製バッグから、コンビニで買えるお菓子のパッケージまで、現代にはアーティストがデザインした限定版がたくさんあります。お互いの知名度や価値を高め合えるPR戦略ですが、ブランドやアーティストが好きな人にとっても嬉しいコラボですよね。

デュフィの絵画と同じ世界観を持った華やかなドレスを見ていると、『アートを所有する喜び』をも想像してしまいます。コラボでアーティストのファンになり、アート作品の購入に発展するのも素敵です。

永く愛され続ける仕事

展示風景

デュフィのテキスタイルは21世紀の今も愛されています。2010年にパリで上演されたミュージカル『マイ・フェア・レディ』の衣装には、デュフィのデザインによるテキスタイルが使われました。その数はなんと25点!

本展では、その中から再制作された4点の衣装を見ることができます。撮影可能なフォトスポットになっているので、展覧会を訪れた思い出に、ぜひ記念写真を撮ってくださいね。

実は、デュフィは絵画制作に力を入れるため、1928年にビアンキーニ=フェリエ社との契約を終了しています。つまり、デュフィのデザインしたテキスタイルは、少なくとも約90年ほど昔に作られたということです。

その古さを感じさせない大胆なモチーフには、永く愛される秘密が隠れているはず。一見、奇抜に見える鮮やかなデザインが、時を超えて支持され続けることをデュフィは知っていたのでしょうか。

【まとめ】『ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン』をビジネスパーソンらしく味わう

展示風景

展覧会を読み解くヒントとして、デュフィの作品やマルチな才能についてお伝えしてきました。5つのポイントをまとめておきましょう。

①『生きる喜び』を描いた画家
②テキスタイル・デザイナーとしても才能を発揮
③良い仕事と良い人間関係
④コラボレーションの先駆け
⑤現代でも愛される仕事を残した

デュフィが残した作品は、現代の私たちにも『生きる喜び』を感じさせてくれます。本展は、仕事もプライベートも充実させたい、すべてのビジネスパーソンの背中を押してくれることでしょう。

展覧会情報

ラウル・デュフィ展 絵画とテキスタイル・デザイン
会期:2019年10月5日(土)~12月15日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
開館時間:午前10時より午後6時まで(入館は午後5時30分まで)
※11月1日(金)、12月6日(金)は夜間開館 午後8時まで(入館は午後7時30分)
休館日:水曜日
展覧会ホームページ:https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/191005/

文 美術ブロガー 明菜

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