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MOMATコレクションと『北脇昇 一粒の種に宇宙を視る』に学ぶ将来を見通す力

北脇昇《借景(観相学シリーズ)》1937年 東京国立近代美術館

美術ブロガーの明菜です。ART HOURSでは、「ビジネスパーソンが美術展から何を学べるのか」をテーマに、オフィスから飛び出してアートから学ぶお手伝いをさせていただきます。

さて、今回は東京国立近代美術館の所蔵作品展『MOMATコレクション』と、コレクションによる小企画『北脇昇 一粒の種に宇宙を視る』をご紹介します。今回のMOMATコレクションと北脇昇特集は、2020年6月14日まで開催されています。

所蔵作品展『MOMATコレクション』では、約200点もの近現代の美術に触れることができます。北脇昇特集では、シュルレアリスムの手法を取り入れた前衛絵画を鑑賞できました。

古賀春江《海》1929年 東京国立近代美術館

ビジネスパーソンの皆さんは次の3つのポイントを参考に、社会情勢を敏感に察知し作品に反映するアーティストの思考と行動を展覧会から学べるのではないでしょうか。

①ビジネスパーソン向けプログラムがある美術館
②激動の時代を生きた芸術家の視点
③社会の動きを捉え問いを立てる力

東京国立近代美術館について

東京国立近代美術館は、明治から現代までの日本美術を中心に、1万3000点を超えるコレクションを所有する美術館です。その中には、横山大観、菱田春草、岸田劉生らの重要文化財も含まれます。

【重要文化財】岸田劉生《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年 東京国立近代美術館

同館は、ビジネスパーソン向けプログラム「Dialogue in the Museum」を開催していることでも知られています。プログラムは、東京国立近代美術館が山口周氏(独立研究者・著作家・パブリックスピーカー)が共同開発したワークショップ形式のセミナーです。
Dialogue in the Museum ビジネスセンスを鍛えるアート鑑賞ワークショップ(東京国立近代美術館HP)

山口周氏は『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者で、ビジネスパーソンが美術鑑賞をするべき理由を分かりやすく説いています。詳しくは、書評の記事をご覧いただければと思います。

幅広いジャンルに跨がるコレクション

所蔵作品展『MOMATコレクション』では、膨大なコレクションの中から約200点が展示されています。近現代の日本美術の流れが分かる展覧会では、国内最大級の規模です。

【重要文化財】川合玉堂《行く春》 1916年 東京国立近代美術館

2020年2月11日〜6月14日の所蔵作品展『MOMATコレクション』では、季節を捉えた作品が大きな見どころです。前期(〜4月12日)には桜を描いた作品が、後期(4月14日〜)には雨や風をテーマにした作品が展示されます。

それだけでなく、日本の自然を賛美するような春らしい花の絵など日本らしい自然を描写した絵画がある一方で、第二次世界大戦中に描かれた戦争絵画も展示されています。展示作品のテーマが幅広く、あらゆる観点で日本を捉えることができるでしょう。

橋本関雪《十二月八日の黄浦江上》 1943年 東京国立近代美術館

明治から現代までの日本は、西洋文化の流入や急速な近代化、そして戦争を経験してきました。混沌とした社会の中で、新しい時代を切り開く美術が生まれ、本展で見られるように多様な表現の作品が生まれたのです。

ぜひ、芸術家の目に社会がどのように映ったのか、想像しながらご覧いただければと思います。鑑賞を通じて観察眼や想像力を養っていけば、ビジネスにおける将来を先見する力の強化にもつながるはずです。

理論を絵画で表現した北脇昇

北脇昇《空港》1937年 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館では、幅広い時代のコレクションを紹介するだけでなく、特定のテーマに沿った小企画も開催されています。今回はコレクションによる小企画『北脇昇 一粒の種に宇宙を視る』が開催されており、日本のシュルレアリスム作家に分類される北脇昇(1901〜1951年)の作品が40点ほどまとめて展示されています。

北脇の作品は非常に独特で、理性を重視して描かれています。色彩理論、植物学、数学、古代中国の易などの知識を用い、北脇自身の考えを理論的に表現しているのです。

易は古代中国の自然の見方で、万物を陰と陽に分ける考え方です。陰陽の組み合わせで、自然の移り変わりを説明しようとしました。

北脇昇《周易解理図(乾坤)》1941年 東京国立近代美術館

《周易解理図(乾坤)》には、特に北脇の社会の見方が易などの文法を使って表されていると考えられます。絵画に社会の理想的な気の巡りが表現されていると読み解けるからです。

画面が横に伸びた線で上下に分けられ、上はプラス(陽)、下はマイナス(陰)を表しています。また、ゲーテの色彩論を組み合わせて、陽を暖色、陰を寒色で表現しています。易を東洋、ゲーテを西洋の代表と見立て、キャンバス上で両者を融合しているとも考えられます。

上下を分ける線はキャンバスの端に近づくと消え、完全に上下を分断しているわけではありません。このことから、陰と陽が混ざって循環することで、世の中が上手く行くと考えていたのでは、と考察できます。また、本作が戦時中に描かれたことを踏まえると、天皇と国民の理想的な関係を表現したとも解釈できます。

北脇昇《クォ・ヴァディス》1949年 東京国立近代美術館

戦時中であからさまな表現を避けざるを得なかった事情もあるとは思いますが、北脇は自らの考えや理論を言葉ではなく絵画で表現しました。難解な作品ですが、自分なりに観察してみましょう。北脇が独自の手法で当時の社会の課題を描き出していたことを、感じ取れるのではないでしょうか。

アート作品に社会情勢が反映されるのは、アーティストが社会の動きを敏感に感じ取り、ユニークな視点で問いを表現しているからです。アート鑑賞を通じて鑑賞者は問いを共有し、考えることを促されるのです。

このような理由があり、ビジネスパーソンは問いを立てる能力をアーティストから学ぶことができます。社会を適切に捉えて問いを立てる力は、社会にイノベーションを起こす発想を生むことにつながります。本展では北脇の独特な絵画表現の不思議さだけでなく、アーティストのユニークな思考にも関心をお持ちいただければと思います。

【まとめ】東京国立近代美術館のコレクション展示をビジネスパーソンらしく味わう

展覧会を読み解くヒントとして、社会情勢を敏感に察知し作品に反映するアーティストの思考と行動についてお伝えしてきました。3つのポイントをまとめておきましょう。

①ビジネスパーソン向けプログラムがある美術館
②激動の時代を生きた芸術家の視点
③社会の動きを捉え問いを立てる力

東京国立近代美術館では、今回の会期に限らず質の高いコレクションによる展覧会が開催されています。記事中でご紹介した内容は、会期後も役に立つはずです。何度も美術館に足を運び鑑賞することで、現状を理解し将来を見通す観察力を鍛えられるのではないでしょうか。

展覧会情報

『MOMATコレクション』
『北脇昇 一粒の種に宇宙を視る』
会場:東京国立近代美術館
会期:2020年2月11日(火・祝)-6月14日(日) 
開館時間:10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)
※入館は閉館30分前まで
休室日: 月曜日[ただし3月30日、5月4日は開館]、5月7日(木)
※2月29日(土)~3月15日(日)は臨時休館(最新情報は美術館HPを参照)
美術館HP: https://www.momat.go.jp/am/

文 美術ブロガー 明菜

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