Article

今を生きる現代アーティストへのシンパシー
アーティスト 柿沼瑞輝

2020年2月12日に開催されたThe Art Clubでは、ArtScouterの登録アーティストである柿沼瑞輝さんと宍戸竜二さんが順に登壇し、司会のTakさんと一緒にスライドで作品を参照しながら、制作にかける意気込みなどを語っていただきました。

Takさん 柿沼さんは東北芸術工科大学洋画コースを卒業された後、埼玉を拠点されながら、主に大阪のギャラリーであるYoshimi Artsにて作品を発表されています。まずはどのような経緯で絵画を描かれているのか教えて下さい。

柿沼さん 小さい頃から学校で景色や人体のデッサンを描いていましたが、それだけでは美大は通用しないので、4年時の卒業制作の時に悩みに悩んで、ようやく1つの答えとして出たのが今の作風です。

その意味では完成形ではありません。また中学1年生の頃に父に連れられた軽井沢のセゾン美術館で見た作品群が、知らないうちに絵に反映されていたりします。

実際、この作風になってから、白髪一雄さんや榎倉康二さん、それにラウシェンバーグなどの現代美術が凄く面白く感じられるようになりました。また古典ではベラスケスやカラヴァッジョも好きです。

Takさん 一見すると抽象的に見えますけど、決してそうではありませんよね。斜めの線やグリット、また色もバランス良く、きれいに配置されています。一枚を仕上げるのにはどのくらい時間がかかるのでしょうか。

柿沼さん まちまちです。以前は手数の多いほど作品の質も高くなると考えて、隅から隅まで細かく描いていましたが、次第に窮屈に感じるようになってしまいました。

たくさん時間をかけた結果、失敗した作品もあります。「しっくりこない、画面を仕上げるのに正解はない。」と直感的に思うことも少なくありません。

また3年前ほどからマスキングテープを利用するようになりましたが、それまでは勢いのある筆をぶつけて、ナイフで絵具(マチエール)を複雑に混ぜ合わせつつ即興的に描くのが面白いと思っていました。

Takさん マスキングテープの使用も特徴的ですね。筆の跡も結構残っています。色合いも作品によってかなり違って見えます。

柿沼さん  以前から版画がカッコいいと思っていました。アクリルラッカーを導入し、油彩と混合して描いていて、絵具の質感を残すようにしています。

ただそこばかりを追求するのも違う。それぞれの作品に異なる個性が出ていれば良いと考えています。

Takさん 1号は葉書よりも2回りほど大きいサイズとされています。柿沼さんの作品は10号から15号程度が多いそうですが、今年4月の個展にむけて、もっと大きな作品にもチャレンジしていると聞きました。

柿沼さん 最大で120号の作品があります。描くのに2年かかりました。

Takさん 2年ですか!たくさん量産するような描き方ではないのですね。

柿沼さん 筆の手がのっている時とそうでない時でまちまちです。この作品で最後に手を加えたのが、四隅から炎のようなモチーフが表れる部分ですけど、以前の升目やマスキングを多用した作品と違う雰囲気になって良かったと思っています。

Takさん 文筆家もなかなか筆が進まないこともありますしね。確かに前の作風とは違います。抽象ではなく具象的というか…。ご自身の中で変化があったのでしょうか。

柿沼さん これはカイカイキキギャラリーの菊畑茂久馬さんの「春の唄」という個展(2015年)で見た作品が凄くカッコ良くて、影響されました。また「ステラよりもサム・フランシス風の方が良いかな。」とも思って。

Takさん 20世紀や今を生きる現代アーティストに大きなシンパシーを感じていると。

柿沼さん エルンストも好きで憧れます。作品もうまいのに、本人は多分うまいとか気にしてないという…。

Takさん エルンストはフロッタージュに取り組みましたけど、柿沼さんもマスキングなどの新たな技法にチャレンジしている。しかし四隅の赤が効いてますね。タイトルを何故「触覚」とされたのですか。

柿沼さん タイトルは画面を仕上げた時の直感で決めます。普段からネタ帳にタイトル案を書いたりはしてますけど、意外とそこから使うことはありません。閃きで決めました。

Takさん 創作には閃きも重要ですね。柿沼さんの作品を見ていくと絵がどんどん成長しているような感じがします。これからも多くの方々の心を捉えるのではないでしょうか。

※トークイベントでは、途中、実際に柿沼さんの絵画をオフィスに導入したHACHIの酒井社長も加わり、「はじめは美術に興味がなかったものの、ArtScouteを通して選んだ絵画が、今やオフィスを明るくして気持ちも晴れるようになった」との体験を話しました。

<関連記事>
2月12日(水)開催 The Art Club by ArtScouter ~アートとビジネスの原点回帰 Vol.01レポート
傷ついた人々を癒すような絵を描きたい アーティスト 宍戸竜二


<柿沼瑞輝 アーティスト情報>
1989年東京都生まれ。2011年東北芸術工科大学洋画コース卒業。埼玉県在住。
近年に個展「柿沼瑞輝 2011-2018」(Yoshimi Arts/大阪/2018年)、「色光」(Yoshimi Arts/大阪/2017年)を開催。またグループ展「現代アート 3つの視点」(岡山髙島屋 美術画廊/岡山/2017年)、「”Material and Form” in a digital age II」 (Yoshimi Arts/大阪、2016年)などにも参加し、作品を発表し続けている。

<Takさんプロフィール> 美術ブログ『青い日記帳』主宰。goo『いまトピ』などのメディアに多数寄稿。カルチャーセンターや美術館でのトークショーや講演を積極的に行い、日々、展覧会レビューなど幅広くアート情報を発信している。著書に『いちばんやさしい美術鑑賞』(ちくま新書)や『美術展の手帖』(小学館)など。『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書)を監修。

文  鈴木雅也/写真  吉田和生

Related

Page Top
メール メール