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『白髪一雄 Kazuo Shiraga : a retrospective』に学ぶ常識を覆す制作

白髪一雄《天富星撲天雕》1963年 尼崎市

美術ブロガーの明菜です。ART HOURSでは、「ビジネスパーソンが美術展から何を学べるのか」をテーマに、オフィスから飛び出してアートから学ぶお手伝いをさせていただきます。

さて、今回は『白髪一雄 Kazuo Shiraga : a retrospective』をご紹介します。本展は東京オペラシティ アートギャラリーで2020年3月22日まで開催されています。本展は白髪一雄(しらが かずお)の東京での初の本格的な個展となります。

展示風景

白髪は抽象絵画を多く制作しましたが、興味深いのが「足で絵具を広げる手法」です。身体の運動による大胆な表現で、キャンバスのサイズも大きいので、画家の爆発したエネルギーを感じられることでしょう。スターバックスのCFOであるハワード・シュルツ氏も白髪一雄のファンであり、作品をオフィスに飾っているそうです。

ビジネスパーソンの皆さんは次の3つのポイントを参考に、常識を覆す創造性を展覧会から学んでみてはいかがでしょうか。

①白髪一雄のフット・ペインティング
②今までに無いものを作れる環境
③国際的に注目を集めている

白髪一雄とはどんな芸術家か

白髪一雄(1924〜2008年)は、床に置いたキャンバスの上に絵具を垂らし、足で広げる「フット・ペインティング」で知られる画家です。

白髪のフット・ペインティングの特徴は、完成したキャンバスだけでなく、足で描く行為もパフォーマンスとして作品の一部になっていることです。天井から吊り下がったロープに掴まり、足で絵具をぬるりと広げる様子は、ある種の儀式のようでもあります。

展示風景

本展では絵画を壁だけでなく、床にも設置しています。床に置かれたキャンバスを上から覗き込むと、ロープに掴まって足で描いていた白髪に近い視点を体感することができました。

今までに無いものを作る具体美術協会

日本の現代美術史は、戦後の1960年代頃を起点に議論されるのが一般的です。この頃に活躍した芸術家集団の1つに「具体美術協会」があり、白髪もその一員でした。1954年に結成され吉原治良が率いた「具体美術協会」は、日本の現代美術史において存在感が大きいので、この機会に覚えておいていただければ、と思います。(白髪は1955年から参加)

吉野は「今までに無いものを作る」とのモットーを掲げ、具体のメンバーたちは新しい方法で制作を行いました。下着姿で泥にまみれてもがく白髪の《泥に挑む》もその代表例です。必ずしも文字通りの美しさを目指さなかったため、既存の美術に対して固定観念を持っている人ほど驚いてしまう作品が多数生まれました。具体は日本における「何でもありの現代美術」の始まりとしても位置づけられます。

白髪一雄《天異星赤髪鬼》1959年 兵庫県立美術館(山村コレクション)

白髪が芸術を追求するにおいても、新奇なものを追求できる環境にいたことは大きいでしょう。「足で絵を描く」という、人によっては鼻で笑ってしまうようなアイディアを貫いた本人の資質や環境に、敬意を抱いてしまいます。

本展ではロープに掴まり絵具を足で広げる白髪の制作の映像も展示されています。作品だけでなく、特異な制作方法についても学ぶことができるでしょう。

展示風景

今でこそ「アートは何でもあり」と考えられるようになってきましたが、これは比較的最近の考え方です。具体を始め、戦後の芸術家たちが新しい表現を模索したことが、現代における「枠に捉われない芸術の自由さ」につながっているのです。

また、現代のビジネスパーソンからアート思考が注目されているのも、「枠に捉われない自由な発想のヒントとするため」です。何でもありの現代美術は、創造性を求めるビジネスパーソンとも相性が良いと思います。

白髪が制作に使用したロープ

数ある現代美術の作品の中でも、新奇さでフット・ペインティングの右に出るものは無いのではないでしょうか。常識を覆す「足で描く」手法を生み、長きにわたって制作を続けた白髪から、常識を超える発想力を学びたいものです。

具体美術協会で新しさを追求できる環境にあったことも、現代のビジネスにおいて直接輸入できることかと思います。尖った発想を伸ばす環境づくりは、今の日本企業が必要とするものの一つではないでしょうか。

評価が高まる白髪一雄の作品

白髪の作品は、2013年にニューヨークのグッゲンハイム美術館などで具体美術協会が紹介されて以降、国際的な評価が高まっています。

白髪一雄《扶桑》1986年 芦屋市立美術博物館

実際、2014年にニューヨークで行われたサザビーズのオークションでは、白髪の作品が530万ドル(約5億5000万円)で落札されました。さらに、2017年には大阪府の京阪枚方市駅に飾られていた作品が盗難に遭い、4500万円で売られる事件すら起きています。

必ずしも売買された金額と作品の良し悪しが比例するとは限りませんが、白髪の作品が国際的に大きな注目を集めていることが伝われば幸いです。白髪を含む具体の作品は、世界のマーケットで存在感を発揮するようになってきているのです。世界で通用するHokusaiのように、具体も海外での知名度が上がっていくかもしれません。

展示風景

本展は、戦後の日本美術を牽引した白髪の大規模な回顧展です。エネルギッシュな作品からインスピレーションを得るだけでなく、美術史を学ぶきっかけにもしていただけるのではないでしょうか。

【まとめ】『白髪一雄 Kazuo Shiraga : a retrospective』をビジネスパーソンらしく味わう

展覧会を読み解くヒントとして、常識を覆す創造性についてお伝えしてきました。3つのポイントをまとめておきましょう。

①白髪一雄のフット・ペインティング
②今までに無いものを作れる環境
③国際的に注目を集めている

大規模な回顧展となる本展で、白髪の初期から晩年までの作品を鑑賞し、その異色の発想力に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。ビジネスパーソンにとっても、創造性を刺激される展覧会となるでしょう。

展覧会情報

期間:2020年1月11日[土]─ 3月22日[日]
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間:11:00 ─ 19:00 (金・土は11:00 ─ 20:00/いずれも最終入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、2月9日[日](全館休館日)
展覧会公式HP: https://www.operacity.jp/ag/exh229/

文 美術ブロガー 明菜

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