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ビジネスにおけるインプットの大切さを『北斎師弟対決!』に学ぶ

美術ブロガーの明菜です。ART HOURSでは、「ビジネスパーソンが美術展から何を学べるのか」をテーマに、オフィスから飛び出してアートから学ぶお手伝いをさせていただきます。

さて、今回は『北斎師弟対決!』をご紹介します。本展はすみだ北斎美術館で2020年4月5日まで開催されています。

日本を代表する絵師、葛飾北斎には孫弟子を含めて約200人もの弟子がいたとされています。彼らは北斎の絵を手本に学んだため、師匠と同じテーマの絵も制作しています。本展では両者を比較することで、北斎の魅力のみならず弟子の奮闘を垣間見ることができます。

ビジネスパーソンの皆さんは次の3つのポイントを参考に、主体的なインプットの大切さを展覧会から学べるのではないでしょうか。

①北斎と弟子の作品の比較
②師匠から学んだ弟子のオリジナリティ
③北斎が重んじた主体性

北斎と弟子の作品を見比べる

本展では、人物、風景、動物、エトセトラの4章構成で、北斎と弟子の作品を比較していきます。展示数は100点を超えており、弟子が北斎と同じモチーフや構図を引用した作品も多く展示されています。同じテーマの作品をよくこれだけ見つけられたものだと、感心してしまうものもありました。

葛飾北斎『椿説弓張月』続編 巻三 石櫃を破て曚雲出現す (通期) すみだ北斎美術館蔵

本展では、弟子が北斎を真似るだけでなく、自分らしいユニークな絵を描くための模索について学べました。さらに、師匠である北斎はどのように絵の腕を磨いたのかを考えることで、現代人も自らの成長のヒントを得ることができます。

二代葛飾戴斗『画本西遊全伝』四編 五 青竜山の妖怪 三蔵を摂去 (通期) すみだ北斎美術館蔵

それでは、実際に北斎と弟子の作品を見比べながら、技術の継承と弟子が加えたオリジナルの要素について見ていきましょう。

弟子が北斎から学んだこと

まずは、北斎の娘である葛飾応為(かつしか おうい)と、北斎の絵を見比べていきましょう。応為は美人画が得意で、北斎も「余の美人画は、阿栄におよばざるなり」と語ったと伝えられています(阿栄は応為のこと)。

葛飾北斎「春興五十三駄之内 白須賀」(作品を替えて通期で展示) すみだ北斎美術館蔵

北斎が描いた柏餅を作る女性と、応為が描いた練香を作る女性は、姿勢がよく似ています。応為が描いた女性の方が曲線的なフォルムで、表情も応為の方が柔らかく、より女性的な印象があります。特にご注目いただきたいのが、指先の描写です。柏餅を受ける左手の指は、先端までしなやかに表現されています。

葛飾応為『女重宝記』四 女ぼう香きく処 (通期) すみだ北斎美術館蔵

このことから、応為は北斎の構図を参考にしつつ、自らの視点で女性らしさを強調した絵を描いたことが分かります。師匠の技術とユニークな視点が合わさり、応為らしい絵が描かれました。

次に、卍楼北鵞(まんじろう ほくが)と北斎の作品を比べてみましょう。北鵞は抱亭五清という浮世絵師の弟子とする説もあるのですが、葛飾風の作品を多く残しています。作品は前期の展示でしたので、パネルで比較してみましょう。

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北鵞が描いた武将(左)は、北斎の武将(右)と姿勢がよく似ているものの、表情はより大胆になっています。吊り上がる目と眉やへの字形の口は共通していますが、北鵞は血走った目や食いしばった歯を描き、ドラマチックな効果を盛り上げています。北鵞もおそらく、北斎の絵から構図などを学び、自分らしさを加えて絵を描いたのでしょう。

このように、本展では北斎と弟子の影響関係を考察することができます。それと同時に、北斎の絵の幅広さにも気づくことができます。上記では美人画や武将の絵を描いたことをお伝えしましたが、他にも富嶽三十六景などの風景画や、動物や植物の写実的な絵も残しました。北斎は誰から学び、幅広いジャンルの絵を描けるようになったのでしょうか。

北斎はいかにして腕を磨いたのか?

幅広いジャンルに跨がる作品を見て、そもそも師匠である北斎はどのように絵の腕を磨いたのかが気になりました。これを理解できれば、現代のビジネスパーソンも自分の成長のヒントを得られると思います。

北斎は師匠の下で1つの流派についてのみ学ぶのではなく、貪欲にさまざまな流派の絵の技術を学んでいました。例えば、琳派に私淑し、「宗理」の名前で江戸琳派の絵師として活躍していたことがあります。また、勝川派という浮世絵の流派に属していた頃は、他の流派からも積極的に画技を学びました。師匠から受けた指導以上に、自ら幅広い画技の習得に励んだのです。

常設展より「北斎のアトリエ」再現展示(北斎と応為)

北斎が門人に直接指導することを好まず、弟子に絵手本から自ら学ぶことを求めたのも、上記の北斎の経験があるからでしょう。教えられるのを待つのではなく、主体的に学ぶことの大切さを北斎は知っていました。

同様に、ビジネスパーソンも自ら主体的に学ぶことで成功に近づけるのではないでしょうか。良いアイディアなどのアウトプットを生むためには、世の中に対して常にアンテナを張っておき、インプットを増やす必要があります。新聞やビジネス書で知識を身につけることだけでなく、美術鑑賞でアート思考を学んだり、映画や芸能など最新のエンターテインメントに触れたりすることもインプットに含まれます。

さらに、北斎はアウトプットが素早いことも特徴でした。彼が生涯を通して約3万点もの作品を残せたのも、主体的な学び(インプット)と実践(アウトプット)を高速で繰り返すことにより、絵の技術が洗練されていったからでしょう。

これは現代のビジネスパーソンーソンに置き換えることができます。北斎があらゆる流派の技法を吸収しつつ、自分の腕を磨いたのと同様に、ビジネスパーソンにとっても、自身の領域を広げインプットを増やし、素早くアウトプットを出す訓練は重要です。これによって北斎のように、最終的に質の高い、自分ならではの価値を出すことにつなげることができるでしょう。

【まとめ】『北斎師弟対決!』をビジネスパーソンらしく味わう

展覧会を読み解くヒントとして、主体的なインプットの大切さについてお伝えしてきました。3つのポイントをまとめておきましょう。

①北斎と弟子の作品の比較
②師匠から学んだ弟子のオリジナリティ
③北斎が重んじた主体性

本展は「北斎と弟子の比較」という分かりやすいテーマなので、美術鑑賞の初心者にとっても理解しやすい展覧会だと感じました。日本美術に触れた経験が少ない方はもちろん、海外から来日中のクライアントを案内するのにもおすすめです。

展覧会情報

『北斎師弟対決!』
会期:2020年2月4日(火) 〜 2020年4月5日(日)
※前後期で一部展示替えあり
◎後期 3/17(火)~4/5(日)
※3月16日まで臨時休館、今後の開館予定は美術館HPを参照
開館時間: 9:30~17:30 (入館は17:00まで)
休館日:毎週月曜日
美術館HP: https://hokusai-museum.jp/

文 美術ブロガー 明菜

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