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『ダムタイプ|アクション+リフレクション』に学ぶアート思考

ダムタイプ《MEMORANDUM OR VOYAGE》2014
特別協力:ソニーPCL株式会社 | 4K VIEWING

美術ブロガーの明菜です。ART HOURSでは、「ビジネスパーソンが美術展から何を学べるのか」をテーマに、オフィスから飛び出してアートから学ぶお手伝いをさせていただきます。

さて、今回は『ダムタイプ|アクション+リフレクション』をご紹介します。東京都現代美術館にて、2020年2月16日まで開催されている展覧会です。日本を代表するメディアアーティストグループの大規模な個展のため、大きな注目を集めています。

この記事では、ダムタイプが何者であり、どのような作品が展示されているのか紹介していきます。ビジネスパーソンの皆さんは、次の3点を意識しながら展示をご覧になってみてはいかがでしょうか。

①ダムタイプとは何者か?
②時代の変化をものともしない普遍性
③一流アーティストグループならではの発想力

ダムタイプとは?

ダムタイプとは、1984年に京都市立芸術大学の学生を中心に結成された、日本を代表するメディアアーティストグループです。映像や音、機械などを用い、ジェンダーや人種といった問題を取り上げた作品を制作しています。

ダムタイプ《Documentary Video 1 (memorandum)》2019 (ed.)

2018年にはフランスのポンピドゥー・センター・メッス分館において開催されたダムタイプの個展が行われました。『ダムタイプ|アクション+リフレクション』は、2018年の個展に新作やアーカイブなどを加え、バージョンアップさせた内容となっています。

国内外で高く評価されるダムタイプ。結成35周年を迎えた2019年に開催される本展は、過去を振り返るだけでなく、「ダムタイプのアートは今や未来に何を問うのか」を考えさせられる展覧会です。ぜひ会場に足を運び、私たちを取り巻く世界への問いを感じ取っていただければ、と思います。

現代社会にも通じる作品群

1984年に結成されたダムタイプの作品群の多くは、2019年の現代社会にも通じる作品であり、私たちに新たな気づきを与えてくれます。

ダムタイプ《Playback》2018

《Playback》は、16台のターンテーブル・ユニットの上で、レコード盤から音源がランダムに再生される作品です。すべてのレコード盤が常に再生されているわけではなく、針が落ちて音が聞こえるタイミングや時間はそれぞれです。

音が再生されている間はレコード盤に光が当たり、全体を俯瞰して見ても、どのレコード盤から音が再生されているのか分かります。光によって浮かび上がるレコード盤は神秘的で、その印象だけでも、ずっと見ていたくなってしまいます。

ダムタイプ《Playback》2018

本作の音源には音楽や声、55言語による挨拶など、さまざまな音素材が用いられています。それぞれは意味を持った音ですが、無機質なレコード盤から再生されている点が興味深いです。

16台と閉じたネットワークの中で、ターンテーブルどうしが会話をしているようにも見える作品です。その様子は、インターネットの限られた空間において、SNSでコミュニケーションを取る私たちを暗示するようではないでしょうか。

プレス内覧会に登壇したダムタイプ・高谷史郎氏(左)、キュレーター・長谷川祐子氏(右)

《Playback》は、1989年の展覧会「Against Nature」のために制作された同名のインスタレーションのリモデル版作品です。管理社会を批判した1988年初演のパフォーマンス《Pleasure Life》をベースとした作品です。

1991年生まれの筆者は、1989年に発表された《Playback》を知らずに本展を拝見し、リモデル作品について21世紀のインターネット社会を表す作品だと感じました。つまり《Playback》は、表面的な時代の移ろいをものともしない、普遍的なアートだと言えるでしょう。

アーティストは、ビジネスにおいても求められている社会問題を深く洞察して普遍的な価値を生み出す力を持っています。その点において、ビジネスパーソンがアートから学ぶことは多いのではないでしょうか。

重層的な情報とシンプルな造形

ダムタイプの作品では、パフォーマーの身体が重要な役割を果たすことがあります。例えば《pH》は、機械が紙をスキャンするかのような動きで、人の動きを制限します。

ダムタイプ《pH》2018、ダムタイプ《LOVE/SEX/DEATH/MONEY/LIFE》2018

本作は1990年に初演されたパフォーマンス《pH》舞台装置を再現したものです。パフォーマンスでは、パフォーマーが横切る「トラス」を飛び越えるか、横たわってやり過ごすかしていました。

本展の展示室の床面にはたくさんの質問が書かれていますが、暗い展示室では蛍光灯を積んだトラスが文字の上をスキャンしながら通ったときにしか、質問を読むことはできないでしょう。質問を読みたい鑑賞者は作品の中に入り、自然とトラスの動きに合わせて歩くことになります。

ダムタイプ《pH》2018

実際にトラスの動きに合わせて歩いてみたところ、想像以上にトラスが速く動いてしまい、質問文を読みきれないことがありました。最後まで読めないもどかしさや、トラスを止めたり遅くしたりできない不自由さを強く感じました。

ここでは、人間と機械の関係において、機械の決まった動きに人間が対応するような主従関係を見ることができるでしょう。人間と機械の二項対立、さらに二項対立と呼べるほど単純な関係なのかなど、さまざまに考察することができます。

パフォーマンス《pH》で使用されたテニスボール

鑑賞者は作品の内側に入ることで、《pH》から多くの問いや疑問を膨らませることができます。情報量の多い作品ですが、基本的にはシンプルな仕組みの機械で表現されていることにも驚きました。

言葉にすれば膨大となる情報を、1つの作品ですっきりと突きつけるダムタイプの表現からは、一流アーティストグループならではの発想力や伝達力を学ぶことができます。ビジネスパーソンの方々も、ダムタイプのアートから問題提起の手法について学びを得られるでしょう。

【まとめ】『ダムタイプ|アクション+リフレクション』をビジネスパーソンらしく味わう

展覧会を読み解くヒントとして、ダムタイプやその作品の一部についてお伝えしてきました。3つのポイントをまとめておきましょう。

①ダムタイプとは何者か?
②時代の変化をものともしない普遍性
③一流アーティストグループならではの発想力

ダムタイプは日本を代表するメディアアーティストグループで、海外からも注目されています。本展は35年にわたる活動について深掘りした大規模な個展なので、現代アートを愛好するビジネスパーソンの皆さまには、この機会を逃さずにご覧いただければと思います。

展覧会情報

『ダムタイプ|アクション+リフレクション』
会期:2019年11月16 日(土)-2020年2月16日(日)
休館日:月曜日(2020年1月13 日は開館)、2019 年12月28日-2020年1月1日、1 月14 日
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1 F
展覧会公式HP: https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/dumb-type-actions-reflections/

文 美術ブロガー 明菜

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