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『ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年』に学ぶ400年の西洋美術

美術ブロガーの明菜です。ART HOURSでは、「ビジネスパーソンが美術展から何を学べるのか」をテーマに、オフィスから飛び出してアートから学ぶお手伝いをさせていただきます。

さて、今回は『ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年』をご紹介します。本展は25年ぶりに実現したブダペスト国立西洋美術館とハンガリー・ナショナル・ギャラリーの所蔵品展です。ハンガリーだけでなく、ヨーロッパのあらゆる国や時代の名品を鑑賞できるのが特徴です。

展示風景

ビジネスパーソンの皆さんの中には、教養として西洋の文化を学んでいる方も多いでしょう。本展では次の3つのポイントを参考に、直に西洋の芸術を味わってみてはいかがでしょうか。

①約400年分の西洋美術の凝縮
②日本では見る機会の少ないハンガリー近代美術
③音楽にも関心を持つ好機

ハンガリーが誇る西洋美術の名品たち

本展で見られるのは、ハンガリーの美術だけではありません。16世紀ルネサンス期のイタリア美術、17世紀ネーデルラントの静物画、19世紀フランスの印象派絵画など、あらゆる国や年代の美術品が来日しています。

ルカス・クラーナハ(父)《不釣り合いなカップル 老人と若い女》 1522年 油彩/板(ブナ) ブダペスト国立西洋美術館
© Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019

今回、16世紀から20世紀まで約400年の西洋美術の歴史を彩った美術品、130点が来日しています。ルカス・クラーナハ(父)、ティツィアーノ、エル・グレコ、モネ、ルノワールなど、各時代を代表する巨匠の作品を鑑賞することができるのです。

世界と渡り合うビジネスパーソンにとって、西洋美術の知識は押さえておきたいところです。しかし、書籍を通して学べる一般論には限界があるでしょう。この機会に幅広い国や年代の美術品と直に向き合い、個々の美術品を読み解く力を育ててみてはいかがでしょうか。

ハンガリーの近代美術に触れる

さて、「戸外での制作」や「補色を利用した鮮やかな色彩」と聞いて思い浮かぶのは、フランスの絵画運動である印象主義ではないでしょうか?いずれもモネやルノワールなど印象派の特徴です。

オーギュスト・ルノワール《少女の胸像》 1895年頃 油彩/カンヴァス ブダペスト国立西洋美術館
© Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019

ですが、明るい画面が特徴の絵画を制作していたのは、印象派だけではありません。同時代のハンガリーの芸術家、シニェイ・メルシェ・パール(1845〜1920年)も、戸外での制作や補色による鮮やかな表現を行いました。

シニェイ・メルシェ・パール《紫のドレスの婦人》 1874年 油彩/カンヴァス ブダペスト、ハンガリー・ ナショナル・ギャラリー
© Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019

《紫のドレスの婦人》は、シニェイ・メルシェが妻を描いた作品です。女性が正装で腰掛け、かしこまった様子でいるのは伝統的な絵画様式に近いです。一方、屋内ではなく戸外を背景とし、紫、緑、黄、水色と引き立て合う鮮やかな色彩を用いた点は、伝統を打ち破る新鮮な描き方でした。

《気球》も興味深い作品で、絵画で取り上げられることが珍しい主題を、画面のほぼ中央に描く大胆な構図が印象に残ります。鮮やかな色彩のために印象派が引き合いに出されることが多いものの、シニェイ・メルシェは独自の理想や世界観を絵画に投影しており、個性的な画家と言えるでしょう。

展示風景

ハンガリーの近代美術を代表する画家として、シニェイ・メルシェを紹介してきました。他にも紹介の必要がある画家は大勢おり、ナビ派のリップル=ローナイ・ヨージェフ、象徴主義のチョントヴァーリ・コストカ・ティヴァダル、分離派のヴァサリ・ヤーノシュなど、このページには収まらないほどです。ぜひ本展に足を運び、19〜20世紀におけるハンガリー美術の多様な表現を読み取っていただけたら、と思います。

ハンガリーの音楽にも広がる関心

ムンカーチ・ミハーイ(1844〜1900年)は、上流階級の人々の室内情景を描いた「サロン絵画」で人気を博したハンガリー出身の画家です。筆の跡や塗りムラを活かした凹凸のある画面に、家具や絨毯、人物の衣服が鮮やかに描き出されており、強く引きつけられてしまいます。画家の計算や手腕を伺うことができるでしょう。

展示風景

ムンカーチは、ハンガリー出身の音楽家フランツ・リスト(1811-1886年)と、リストの最晩年の数年間に親交がありました。代表曲『ラ・カンパネラ』は、誰もが一度は聴いたことがあるピアノ曲でしょう。本展では、ムンカーチが描いたリストの肖像画を見ることができます。

リストはピアノのテクニックに非常に長けており、「超絶技巧のピアニスト」としても知られます。リストが作曲したピアノ曲の1つである『ハンガリー狂詩曲第16番』は、ムンカーチに捧げられました。

リストが75歳を迎える年にパリで開かれた祭典のとき、当時パリに居を構えていたムンカーチ夫妻を訪問しています。2週間のパリ滞在の間にムンカーチが制作したリストの肖像画が、次に掲載した絵画です。約4ヶ月にリストは74歳で帰らぬ人となり、本作はリストの最後の肖像画となりました。

ムンカーチ・ミハーイ《フランツ・リストの肖像》 1886年 油彩/カンヴァス ブダペスト、ハンガリー・ ナショナル・ギャラリー
© Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019

フランツ・リストが作曲したピアノ曲の一部を、本展の音声ガイドのBGMとして聴くことができます。リストがムンカーチのために作曲した『ハンガリー狂詩曲第16番』の一部も収録されています。

演奏は、ピアニストの金子三勇士(かねこ みゆじ)氏です。金子氏には、リストが創設したハンガリー国立リスト音楽院大学で学んだ経験もあります。

展示風景

美術と音楽が切っても切れない関係にあることは、広く知られるとおりです。いずれの知見もビジネスパーソンの教養として学んでおいて損はありません。今、美術に関心を持っているなら、本展をきっかけに音楽にも食指を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

【まとめ】『ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年』をビジネスパーソンらしく味わう

展覧会を読み解くヒントとして、展覧会の内容についてお伝えしてきました。3つのポイントをまとめておきましょう。

①約400年分の西洋美術の凝縮
②日本では見る機会の少ないハンガリー近代美術
③音楽にも関心を持つ好機

本展では、あらゆる国や年代の西洋美術品や、ハンガリー近代美術を鑑賞することができます。美術の知見を深めるだけでなく、音楽にも関心を広げられるでしょう。

ビジネスパーソンの皆さんの中にも、教養として西洋文化を学ばれている方は大勢いらっしゃると思います。本展では多数の名品と向き合うことができますので、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

※館内は特別な許可を得て撮影

展覧会情報

『日本・ハンガリー外交関係開設150周年記念
ブダペスト国立西洋美術館 & ハンガリー・ナショナル・ギャラリー所蔵
ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年』
会期:2019年12月4日(水)-2020年3月16日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
休館日: 毎週火曜日、年末年始2019年12月24日(火)-2020年1月7日(火)
*ただし、2月11日(火・祝)は開館、2月12日(水)は休館
開館時間:10:00-18:00(毎週金・土曜日は20:00まで)※入場は閉館の30分前まで
展覧会HP: https://budapest.exhn.jp/

文 美術ブロガー 明菜

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