Article

アートがオフィスに展示されていたら
こんなこと本当にできちゃうんだ!とエネルギーがもらえる-ANOMALY

左から 浦野さん、山本さん、橋本さん

ANOMALY
山本裕子さん、浦野むつみさん、橋本かがりさん

現代美術ギャラリーを牽引してきた山本現代、URANO、そしてアーティストのマネージメントやコレクションのアドバイス等の実績を持つハシモトアートオフィスが合併し、2018年11月に「ANOMALY(アノマリー)」を設立。「ANOMALY」=正論や常識では説明不可能な事象や個体、変則や逸脱、 “文化的で豊かな土壌”を目指し、大小のギャラリー空間、プロジェクトごとに様々な人が気軽に出入りできるオフィスやラウンジなど、現存のギャラリーの枠に収まらない、新しいかたちのギャラリーです。


アートの文脈を持たない日本が
世界と勝負するには「変なことをやらないとダメ」

「ANOMALY(アノマリー)」を立ち上げようと思われたきっかけは?

山本さん アーティストから「日本にはインターナショナルのギャラリーがない」って言われたことが発端のひとつです。

実際にはあるんですよ。いわゆる世界的に展開するギャラリーはあるんです。ただ、今の日本では、外国の著名な作家を日本へ持ってきて発信をして、“あの作家が扱えるのならばいっぱしのギャラリー”というような風潮になっていて。

海外からの評価がないと、いいギャラリーとか国際的なギャラリーって言われないっていう前提の上で成り立っていることもたくさんあるんです。

それに対してアーティストは、インターナショナルというのはそういうことではないと。それが衝撃的で。それを重く受け止めて、何がインターナショナルなんだろうって考えました。

前提として、コンテンポラリーアートは日本だけで行われているわけではないので、国際言語を持っているひとつのジャンルですよね。

その国際言語を持っているにも関わらず、日本からなかなか出ていけないのはなぜだろうと、以前からギャラリー同士が集まって、みんなでディスカッションしていたんです。

マーケットの問題、プレゼンテーション力、アーティストの意識、コレクター、美術館、教育…いろんなレイヤーが出てくるのですが、結局のところ何十年間も何も変わらないし、抱えている問題すら変わっていない。

欧米とは、コレクターとか文化的な土壌とかの環境が全く違うし、そもそも美術という言葉が明治期以降に誕生したくらい、アートの文脈を日本は持っていないので、欧米のメガギャラリーに勝てるわけがないんです。

でも、世界に匹敵するようなアーティストもいるし、作品もできていると信じていて。そうだとすると、アノマリーという名前の通り、変なことをやらないとダメだなというのが直感的にあって。

そうすると、なんか変わったギャラリーがあるぞ、そこで変な展覧会をやっているぞ、と横に広がっていくことで、ドメスティックなことをやった方がインターナショナルになるのかもしれないなって思ったんです。

ただ、一人で変なことをしてもただの変な人で終わるので、共感するギャラリーがあれば、一緒に共同をしてやっていきたいと思っていろんな人に話をしたんですが、浦野さんは速攻で、橋本さんもおそるおそる。

-話を受けたとき、いかがでしたか?

浦野さん 山本現代とは隣同士だったので、しょっちゅう意見交換をしていた中で、何か新しいことをしたいと常々思っていたこともあり即決ました。

私は1年後かな、くらいの感覚で言っていたら、 (元々ギャラリーがあった寺田倉庫の)上のスペースが空くとなってからが早くて。

そのスピード感には正直ドキドキしましたが、無事スタートできてよかった。日々新しいことにチャレンジしている感満載で、今まで以上にやりがいを感じています。

橋本さん  山本さんとか浦野さんに前のめりの声をかけてもらっていて本当にありがたいなって思ったんですけど、ちょうど私がこのままでいいのかと感じて、違うステップに移行しようかと具体的に考えていた時期だったんです。

3人の中では私が一番年上で、一緒に仕事をしている作家や考え方とかも前の世代の流れを踏襲している部分もあるのですが、これからどんどん日本の現代美術も変わっていって欲しいという気持ちもあったし、それを見てみたいという気持ちと、優秀な今をときめく女性ギャラリストたちとやれるなら、乗ってみるか!という感じで、一緒に始めることにしました。

―今後メンバーが増えることもあり得ますか?

山本さん 増えたらいいですよね。別に女の人だけでやろうと決めたわけじゃなくて、男の人たちにも声をかけたんです。とにかく色々な属性の人が集まったら楽しいかなと思って。

浦野さん 運営はこの3人なんですけど、プロジェクトごとにはいろんな方と関わって、多様性を示していけるようにということで、パブリックスペースにもテーブルを置いて色々な接点を持てる場所というのは意識をして作っています。

展示についても、山本さんの元の作家の展示をやったから、今度は橋本さんの番というようにローテーションでやっていくのはすごくつまらないからやめようって初めから話していて。

山本さん 民主主義が発動すると突飛なアイディアとか面白いアイディアがあっても順番待ちになってしまうじゃないですか。それと同じなんです。だから、そこは適当にやろうと。

浦野さん 時代や全体の流れを見極めた上で話し合いながら決めています。

―「ANOMALY(アノマリー)」を立ち上げたことによって作家さんたちにも変化はありましたか?

山本さん 作家はますます本気でやらないといけないっていう意識になったと思う。

スペースも大きいし、取り上げられたら、うわぁと大々的にやるので、ちょっとした美術館の小さな個展くらい頑張らないとダメなんです。

嬉しいことに外国のお客さんがたくさん来てくださいますし、そういう方たちへのインパクトを持てるくらいの空間はあるので、大変だと思います。でも、ちょこっとやりたい人用に、隣の小さいスペースもあるんです。

浦野さん 逆転してもいいかなと思って。若手が大きなスペースを使って、エスタブリッシュされた作家を小さなスペースで見せてもいいし。スペースのヒエラルキーもできればめちゃめちゃにしたいなって思っています。

アートを知ることで業態によっては信頼されるきっかけにもなる

―ArtScouterのAIがアート作品を選ぶサービスを始めると聞いたときに、どう思われましたか?

全員 いいじゃん!やって欲しい!

―アートとインテリアの違いはどこにあると思いますか?

浦野さん 今その垣根がごちゃごちゃになっているような気がします。一番大きな違いは、作品の成り立ちや、コンセプトがどういうものなのか、という点だと思います。

「アート」とはこういうものとであるはずという問いや想いをアノマリーの活動を通して伝えていきたいと思っています。

―オフィスにあることでアートの持つ力ってどのようなことだと思いますか?

浦野さん 作品によってもちろん違いますが、例えば西野達の作品がオフィスに展示されていたら、こんなこと本当にできちゃうんだ!とエネルギーを与えてくれそうです。

オフィスに飾るとなると、みんなでワイワイ話し合いながら決められるのもいいですよね!コミュニケーションの形が実現できると思います。

山本さん うわぁバカだなぁ!とか。笑 ギューチャン(篠原有司男)とかもそうで、ボコボコボコボコってやっていて、うわぁ、ボコボコやっているだけだって。(笑)

それで86歳までやっていて、江戸っ子みたい!ある程度を超えると尊敬に値しますよね。

橋本さん アートの一番良いのは正解がないところだと思いますね。

今すごく生き辛い世の中になってきて、私はこれが好きというのはどこにも正解がないので、自分を解放できることだと思います。映画とか音楽もそうですし、それが文化の特徴ですよね。

一流のものが必ずしも素晴らしいわけではなくて、子どもが描いた似顔絵の方が自分には価値があるかもしれない。

そういう意味でオフィスにアートがあった方が生活の中にそういうものをとり入れていったら、よりリベラルで素敵な世の中になるんじゃないかしら。

―ビジネスにおいてアートはどのような役割を担うと思いますか?

橋本さん 以前お客様から、オフィスにアートがあることで、来客の掴みもOKだっていう話も聞いたことがあります。

なんですかこれ?と聞かれて、話もはずむし、ミーティングの内容も非常にリラックスして面白くなるというのはあると思います。

某大手企業の方が海外進出をされる折にニューヨークへ行かれて私の知り合いに美術館とかいいギャラリーを全部一緒に回ってくださいって。

何でそれをされたかというと、外国で活躍されている方やトップクラスの方は、お家にアートがあったり、アートのことを教養の一部として非常に勉強していると。そのときに会話が成り立たないと恥ずかしいからって言われたこともありますよ。

山本さん 絵がかかっていると尊敬されますよね。

この前ある商店街を通っていたんですけど、そこの時計屋さんにジュリアンオピーがかかっていたの。パッとみたらすぐにジュリアンオピーってわかるちゃんとしたピースがかかっていて、これはやるなって思って。

あんなところで何百万、何千万の時計を扱っていて大丈夫かなって思ったけど、ジュリアンオピーが掛かっていたらこの人はアートがわかる、知っている人だってわかるわけですよね。

いきなり文脈もなくかかっているっていいなって思いました。この人とはアートの話しができるっていうことがわかりますよね。もしくは興味があるでもいいんですけど。業態によっては信頼されるきっかけにもなると思います。

外交って文化を知らなければできないって言いますよね。ワインかアートか、いずれか知らないとダメって。外務省の人とかもっと来てくれたらいいんですけどね!

文 小杉由布子 / 写真 吉田和生

Page Top
メール メール