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公認会計士に聞く
税制を活用したアート購入のポイントとは?

2019.05.17


©Tawan Wattuya Courtesy of nca | nichido contemporary art

船山公認会計士事務所
公認会計士 税理士
船山雅史さん

一橋大学商学部卒業。アーサーアンダーセンアンドカンパニー(現・アクセンチュア株式会社)、センチュリー監査法人(現・新日本有限責任監査法人)を経て、シティバンク、香港上海銀行などでプライベートバンキング業務に従事。現在は公認会計士事務所を経営しながら、現代美術作品の収集を行う。ジャンルを横断する豊かな視座で集められたコレクションは一目置かれており、過去に3度コレクション展も開いている。ワンピース倶楽部所属。


アートは金融資産の代替投資になり得る

アートに興味を持ったきっかけは?

船山氏 「アート・アドバイザリー・サービス」という仕事をご存知でしょうか? 「アート」のポートフォリオを、金融商品のような投資対象として資産家の方々にアドバイスする仕事です。

確かに資産家はアートやアンティークなどを財産の一部として持っている場合が多いですよね。そうしたものをバランスの取れたポートフォリオとして持つことでその人のステータスも上がり、財産としても価値が保全できる。

私はこのビジネスを外資系金融機関に勤めているときに知ったのですが、れっきとしたキュレーターが社員として富裕層にアドバイスしているのを見て、非常に面白いなと思いました。

当時はバブルの真っ只中で、日本人がゴッホの「ひまわり」を世界最高価格で購入したような時代です。日本では今はなくなりましたが、絵を担保にお金を貸すといったアートローンサービスのようなものもありました。

アートというものには思いもしない力があるんだと知り、興味を持ったのです。

©Paulo Monteiro   協力:小山登美夫ギャラリー

テーマを決めてアートをコレクションする楽しみ

どうやって作品を買っていったのですか?

船山氏 2006年に独立して個人でオフィスを立ち上げました。時間を自由に使えるようになったことから、前からやりたいと思っていたギャラリー巡りを始めたんです。

そうしたら、日本のアーティストさんの作品が思ったより安くてびっくりしました。オフィスや自宅に飾ろうと、気になるアート作品を少しずつ買い集めていき、気がついたら100点を超え、200点を超えて…というふうになり、今に至ります。

実は30点くらい集めた頃に、ある画廊の人に聞かれたんです。「購入していただけるのはありがたいけれど、絵を買ってどうするんですか?」と。

彼が言いたかったのは、「コレクションとはただ単に買い集めるだけではあまり意味がないよ」ということでした。お金に余裕があるからと、食い散らかすようにただ買い漁っても、他人から見たらガラクタと同じだと。

じゃあどうしたらいいのかと聞くと、2つ方法があるというんですね。

1つは、追いかけるアーティストを決めてその人の作品だけを買う方法。アーティストとともにコレクションが成長していくんです。買い続けることでそのアーティストの作品が時系列的に網羅され、資料的な価値も出ると。ただ、そこまで先々のことを考えていなかったので、私には無理だと思いました。

もう1つが、テーマを決めて買っていくことです。それならできるし、すでに自分の中でもテーマはあったので、そうやって集めることにしたんです。ただ、テーマを決めていても広がっていってしまうものなんですけどね(笑)

コレクターはアート作品をどんな基準で選ぶのか

—コレクターとしてのアートを購入する基準は?

船山氏 今は4つの基準で下調べし、購入時の判断材料にしています。
1.その作品が好きかどうか 
2.受賞歴、展覧会実績は? 
3.しっかりしたギャラリーがついているか?
4.誰が買っているか?

すごく実利的なんですが、ギャラリーで聞いても教えてくれるようなことばかりですし、アート作品に触れる中で自分でもある程度、情報が取れるようになっていくものです。

やっぱり、まずは「好き」であること。これは大事ですね。何とも思わないものを買っても意味がありません。

よく「アーティストの誰々は個展で何億円売った」みたいな話がありますが、私は割とそういうみんなが熱狂するようなアーティストの作品や精緻なだけの作品に対しては冷めた目で見るタイプです。

だって、大体アートってわかりにくいものでしょう?みんなが「すごい!」と口を揃えるなんて、「誰かに言わされているんじゃないのか?」と疑ってしまう。あまのじゃくなのですよ。

よく千本ノックなんて言いますが、大事なのは自分の目で数を見て、アーティストの話を聞いて、欲しいと思ったものはタイミングを外さずに買うことだと思います。

そういう意味では、アート・バーゼルのようなアートフェアなんかに足を運んでみるとトレンドもわかるし、元気なギャラリーがどこに目をつけようとしているのかが見えてきたりして、非常に勉強になりますね。

©Paulo Monteiro   協力:小山登美夫ギャラリー

実はアート作品は100万円まで減価償却できる

—税制に詳しいお立場から、企業がアートを購入する際のポイントを教えてください

船山氏 今の日本の税制面から見たとき、「100万円未満のアートは減価償却できる」というのは大きいですよね。アートを「事業の用に供するもの」として認めるこの税制は、海外ではあまりみないもののようです。

1枚のアート作品の価格によって減価償却の取り方は変わってきますが、いずれにしても100万円の範囲内で企業活動のための経費として作品が購入できるのは、もっと多くの企業家に知ってもらって、オフィスにアートを導入されるとよいですね。

あとは、アートの購入を広告宣伝として捉える企業は増えていますよね。実際、株式会社ZOZOの前澤友作社長がバスキアの高額作品を買うことで、世界中がZOZOがどんな会社なのかを知りたがったわけです。

高いお金を出して購入しても、十分に元は取れたでしょうね。そのへんはビジネス的な戦略や経営者の考え方次第でしょう。

―企業がオフィスにアートを導入することのメリットをどのようにお考えですか?

船山氏 オフィスにアートを掲示することで、従業員の知性を刺激する効果はあるのではないでしょうか。海外だと、その国のビビッドな現代アートをオフィス内に飾ってある企業が多いんです。

もともとアメリカにはパーティー文化がありますので、知人を家に招いて狩猟で仕留めたシカの角などを飾り、オーナーが自慢話をしていたのが、現代アートに置き換わったようなところがあります。

定量的にはわかりませんが、オフィスという長い時間を過ごす場所で作品に触れ続けることで、何かしらの新しい価値が刷り込まれるはずだと私は思っています。

Artwork:西野壮平「Tokyo 2014」| Light Jet Print | 2014 | 1600mm×1200mm
© Sohei Nishino  協力:エモントフォトギャラリー

アートの解釈に正解はない

― 船山さんが考える「アートの魅力」とは何でしょう?

船山氏 社会の仕組みやその時の世の中を、アーティストなりに考えて作品に落とし込んでいるところでしょうか。たとえ技術が拙くても、その人の考えがアートとして表現されていると面白いなあと思いますね。

また、私は金融畑が長かったので、アート関係者やアーティストの方々との人間関係を作るのが楽しいのです。彼らは金融界で出会う人たちとは全然違う考え方をしています。

アートは視覚芸術です。文字で読んで理解するものではありません。だからこそ、一目見て世界観を提示する能力のある人が、世の中にたくさんいることに感動してしまいます。

と思えば、特に現代アートは作品についての説明を聞く前と後では、作品に対する印象が変わったりします。その説明が間違っていたとしても、です。そこもまた、アートの面白いところではないでしょうか。

文 志村江 / 写真 吉田和生

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