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「人が交わり、価値を生む場」に。空間のコンセプトがアートの世界観と合致
— FARO

2019.04.22

株式会社スモールトーキョー
シェアオフィス「FARO青山」「FARO神楽坂」の運営

堀 遵 氏
株式会社スモールトーキョー 代表取締役


シェアオフィスの共有スペースを「新しい価値」を生み出す場に

アートをシェアオフィス内に導入しようと思ったきっかけはありますか?

堀氏 「FARO神楽坂」はオフィス、ギャラリー、カフェ、ルーフテラスが混在するシェアオフィスで、2018年にオープンしました。

FAROは「灯台」という意味で、「道しるべとして光を発するもの」からイメージして作ったロゴには、「人と人が交わり合って輝いていく」というメッセージを込めています。

FAROのシェアオフィスをご利用いただいている方の多くはスタートアップの企業で、まさにこれから新しいビジネスを作っていく人たち。

一方、アーティストは何もないところから作品を生み出す人たちですよね。そこに共通点、シンパシーを感じたのです。

この場所を作ろうと思った時から、何か新しい価値を作り出したり、人と人が自然とコミュニケーションできるような調和を生み出す場所にしていきたいと考えていました。だから、アートのある空間にするのは自然な流れでしたね。

どうやって作品を選んだのですか?

堀氏 もともと私はいろんなジャンルのアートが好きでした。だから細かいことはあまり考えず、自分が気に入ったものや、作家さんとのたまたまの出会いの中で選んでいったという感じです。

メインビジュアルになっている、真鍮などを素材に作られたアートは、東城信之介さんという方の作品です。食事の席でたまたま知り合って、話すうちに彼の作品に興味を持ったことから、シェアオフィスに飾るための作品を作ってもらえないかとお願いしたんです。

また、神楽坂は出版社が多い街なのでそれにちなんだ作品や、偶然見て気に入った国際信号旗の組み合わせをモチーフにした作品など、自分が「いいな」と思えたものを飾っています。別にコンセプチュアルアートが好きだからそれを並べようとか、そういうこともあまり考えなかったですね。

ちなみに、作品を作っていただいた東城さんは、なんと先日のVOCA展で大賞を受賞されたんです。そんな方の作品がここにあるわけですから、ちょっと誇らしいですよね。

左から©︎Ai Teramoto ©︎Mika Tajima ©︎TOJO Shinnosuke

アートに関心がなかった人も作品に興味を示すように

アートを導入してみてどうでしたか?どんな反応がありましたか?

堀氏 それまでアートに全く興味がなかったというような方から、「これはどういう作品ですか?」とか「これを作った人はどういう方なんですか?」といった質問をされることが増えてきましたね。「毎日見ていたら興味が湧いてきた」とおっしゃられる方もいます。

ただ、シェアオフィスにアートがあるからといって、何かを押し付ける気は全くないんです。それでも、結果としてアートが皆さんが何かを考えるきっかけになっているというのが、すごく嬉しいですね。

FAROの主体は運営スタッフではなく、ここを利用される皆さんです。それぞれが自由に、好きなように使ってもらいたいと思います。

仕事をする場所ではありますが、話し相手を探しにふらっと来るとか、休憩がてらテレビを見るとか、気分を変えにくるなど、いろんな人が好きなようにこの場所を活用してほしいと考えています。

そんな時に、たまたまでもオフィスで目に入ったアート作品が何かしらの刺激を与えているんだとしたら、それってすごく素敵なことだと思うんです。

それがアートの力ではないでしょうか。だって机や椅子を見たって、人はそんなふうにはなりませんからね。

左から©︎TOJO Shinnosuke ©︎Erico Isamu Oyama
©︎Tetsuo Mizu

「ここに何を飾ろうか」を考えるのが楽しい

―絵の持つ可能性とは、どんなものでしょうか?

堀氏 その作品にどんな意味があるとかないとか、正直どっちでもいいと思うんです。意味だって後付けでも構わないというか。

大事なのはそれぞれの捉え方だと思いますね。概念的なことが大事な人もいれば、直感を大切にする人もいます。ただ、どちらにしても作品に愛着が持てると楽しいですよね。

作品を見た時に、「これを最初に見た時は誰と一緒だった」とか、「あの時はこうだったなあ」「これを買った時はあんなことがあった」みたいに、何かを思い出せるきっかけとしてそこに存在するだけでも、大きな意味はあるんじゃないかと思います。

建物やシェアオフィスなどの空間を作るのも、作家さんが作品を作るのも、「新しい価値」を作るという意味では同じこと。ただ、建物を作る人間にとって、アートってものすごい力を感じるんです。

富山に「 下山芸術の森 発電所美術館 」というところがあります。水力発電所の跡地をミュージアムにして、日本でも唯一無二的なアートを紹介しているちょっと変わった場所です。空港から近いわけではなく、周りにも何もない。

「こんなところに誰が来るんだろう」とついつい思ってしまうんですが、結構な数の人がいるんですね。まさにアートの可能性ってそこだと思います。何か「人を引き寄せる力」があるんです。

― 今後どんなふうにアート作品を取り入れていきたいですか?

堀氏 白い壁を見ながら、「ここにどんな作品があったらいいかな」と考えるのは、すごく楽しいことなんです。だから、もっといろいろと取り入れたいと思っています。

今飾ってある作品も、それがあるとないでは全然違う空間になるはずです。だからこそ、ずっと同じものじゃなくて、定期的に変えたりするのも楽しいかもしれませんね。



文 志村江 / 写真 桑原克典

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